研究課題
若手研究
本研究は、T細胞の機能を抑制する免疫チェックポイント分子を阻害する新たな腫瘍溶解性ウイルスの開発を目的とする。具体的には、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスであるC-REVに、PD-L1に対する抗PD-L1抗体の一本鎖抗体(single chain Fv;scFv)ならびにPD-1細胞外領域(PD-1(1-239))を産生させることにより、ウイルスが腫瘍に感染、破壊するだけでなく、PD-1/PD-L1結合を阻害する新規ウイルスを作製する。
腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍特異的に感染し、腫瘍を崩壊する。さらに、破壊された腫瘍が癌抗原を放出することにより癌免疫応答を惹起する。本研究は、T細胞の機能を抑制する免疫チェックポイント分子を阻害する新たな腫瘍溶解性ウイルスの開発を目的とした。抗マウスPD-L1 scFvならびにPD-1(1-239)を発現する新規腫瘍溶解性ウイルスC-REV-PD-L1-PD-1(1-239)を作成した。また、C-REV投与により腫瘍内に浸潤したT細胞のPD-1発現が減少することを明らかにした。
PD-1阻害剤の投与の可否を判断するにあたり、腫瘍細胞のPD-L1発現率を調べる診断薬が承認されている。一方、PD-L1低発現の腫瘍に対してPD-1阻害剤が効果を発揮する報告もある。また、動物実験においてPD-L1を発現しない腫瘍に対して免疫チェックポイント阻害剤が効果を発揮することも報告されている。従って、腫瘍内のPD-1/PD-L1結合阻害と抗腫瘍効果の関係は明らかではない。本研究によって、腫瘍局所内におけるPD-1/PD-L1結合を直接阻害することにより、その阻害が抗腫瘍効果にどのように関与するか明らかになることにより、今後の免疫チェックポイント阻害治療に貢献できる。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Int. J. Cancer
巻: 1 号: 1 ページ: 1-14
10.1002/ijc.33550