研究課題
若手研究
遺伝性早老症ウェルナー症候群は、一般的なヒトの老化に見られるような症状(白内障、糖尿病、悪性腫瘍など)を若年で呈する一方、間葉系組織を中心とした臓器に、一般老化では見られないような特有の症状(難治性皮膚潰瘍、肉腫など)を呈するが、その原因は明らかではない。本研究では、患者を苦しめる主要な要因の一つである難治性皮膚潰瘍に焦点を当て、老化関連エクソソームとの関連について研究を進める。
ウェルナー症候群(WS)は常染色体潜性遺伝の早老症で、若年期より白髪、白内障、糖尿病、動脈硬化性疾患、悪性腫瘍などを罹患する。加えて、アキレス腱の石灰化、難治性皮膚潰瘍が挙げられるが、根本的な治療法は未確立である。WS患者は間葉系幹細胞(MSC)の異常が疑われる一方で、WS由来MSCが皮膚潰瘍に与える影響は不明である。本研究ではWS-MSCを皮膚潰瘍モデルマウスに注射し、WS-MSCは健常MSCに比して創傷治癒能に劣ることを明らかにした。また、VEGFとの混合投与により、WS-MSCの創傷治癒能が改善することを発見した。これらの知見から今後の病態解明や治療応用への展開が期待される。
本研究では、ウェルナー症候群患者から樹立したiPS細胞から分化させた間葉系幹細胞が、早期細胞老化を示すこと、分泌因子に異常をきたすこと、中でも血管新生に大きな影響を持つVEGFの異常が疑われることを明らかにした。VEGFとウェルナー症候群間葉系幹細胞の混合投与が難治性皮膚潰瘍モデルマウスの創傷治癒を促進させたことから、分泌因子を中心とした病態メカニズムやこれらをターゲットとした治療応用へと発展させることが期待できる。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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