研究課題
若手研究
川崎病で発生する冠動脈瘤は、時に瘤内に血栓を形成する。MRIを使用した血管壁イメージングは、血栓の有無、血管壁の性状を非侵襲的に評価する方法として注目されている。 申請者らは川崎病性冠動脈瘤において血流の状態によっては壁肥厚や血栓と見分けがつかないアーチファクト(偽像)を発生させることがあり、血管壁の性状を正確に描出できないことを明らかにした。そこで本研究において、位相補正反転回復法(phase-sensitive inversion-recovery: PSIR)にT2プレパレーションパルスを組み合わせる新規撮像法によって、アーチファクトのない冠動脈血管壁イメージングの確立をめざす。
川崎病性冠動脈瘤において、T2prep-PSIR法を使用したアーチファクトのない血管壁磁気共鳴イメージング(MRI)手法の確立を目指す研究を行っている。1.5テスラMR装置で9症例22血管部位を対象に、従来法である高速スピンエコー法と比較評価を行った。画像診断医師による血管壁の描出能の定性評価では、T2prep-PSIR法が高いスコアを示した。さらに、血管内腔面積の定量評価でもT2prep-PSIR法が正確な測定結果が得られることがわかった。これらの結果を「Coronary Vessel Wall Visualization via T2-prepared Phase-sensitive Inversion-recovery Steady-state Free Precession Black Blood Imaging in Kawasaki Disease」という論文にまとめ、令和5年8月に日本磁気共鳴医学会が監修している「Magnetic Resonance in Medical Sciences」へ投稿したが、残念ながらリジェクトされた。データの信憑性を高めるため、さらに症例数を増やして再度投稿することを検討している。この研究の成果は、川崎病性冠動脈瘤の診断および治療において重要な情報を提供する可能性がある。MRI手法の改良により、より正確な診断と治療のためのガイドラインを確立することが期待される。今後の研究によって、この手法が臨床現場での実用化に向けて一歩近づくことを期待している。
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