研究課題
若手研究
糖尿病性心筋症は糖尿病性心不全の前段階と考えられ、心筋肥大と拡張機能不全を特徴とするが、詳細な発症メカニズムは明らかでない。糖尿病患者では腸管の脂質吸収が亢進しており、最近になり血中の食事由来の酸化ステロール濃度が増加していると報告された。長期間に及ぶ微量の酸化ステロールの吸収・蓄積が、糖尿病性心筋症の進展に及ぼす影響とそのメカニズムについて、動物モデルを用いて明らかにする。
糖尿病性心筋症進展のメカニズムとして、微量の食餌由来酸化ステロールが長期間吸収されることで、心筋組織に影響を及ぼすとの仮説をもとに本研究を開始した。酸化ステロール添加食・非添加食を作成し、糖尿病モデルマウスに食餌させたところ、心組織重量や心機能に有意な変化を認めなかったが、一方で酸化ステロール投与群で肝機能が障害されていることを新たに見出した。血清ALT値の上昇、肝組織における脂肪滴の蓄積、炎症細胞浸潤を認め、さらにβ酸化関連蛋白やオートファジー関連蛋白の発現が低下していることを見出した。本研究により少量の食餌由来酸化ステロールが脂肪肝・肝炎を惹起することとそのメカニズムが明らかとなった。
本邦において糖尿病患者数は増加の一途を辿っている。糖尿病では腸管の脂質吸収が亢進しており、食事由来成分である酸化ステロールが糖尿病性心筋症を進展させる可能性を着想し、糖尿病マウスモデルを用いて検討した。本モデルでは心機能に有意な差を認めなかった一方で、少量の酸化ステロール長期摂取により、肝機能障害が惹起されることを見出し、そのメカニズムを解明した。脂肪肝炎もまた糖尿病の重要な予後規定因子であり、食事由来酸化ステロールが増悪因子となり得ることが示されたことで、新たな治療法の開発や栄養指導に対する重要なエビデンスにつながる研究であると言える。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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