研究課題
若手研究
近年、分子病態に即した気管支喘息やCOPDの層別化(エンドタイピング)に基づく治療法選択の重要性が認識されつつあるが、現在臨床応用されているマーカーで診断に活用できるのは気管支喘息症例の一部に限られ、COPDの診断に活用できる血液検査はない。気管支喘息・COPD・ACOの診断に広く応用できるバイオマーカーの開発が極めて重要な課題である。本研究では、過去の報告からバイオマーカーとしての可能性が示唆される点や喀痰・血液・気管支肺胞洗浄液で安定的かつ簡便に検出が可能である点からNGALおよびRAGE・sRAGEに着目し、これらの臨床応用への基盤となる知見を確立する事を主目的とする。
計画書に記載したように、マウスに間欠的なpapainの経気管投与を行う実験系において病理学・呼吸生理学・生化学的な多面的検証を行い、さらに経時的な変化を追うことで、臨床的な病態をよく再現するACO疾患モデルマウスとして論文発表行った(Allergy. 76(1):390-4. 2021)。今回樹立した独自のACO疾患モデルマウスを用いて引き続き、解析を行っている。野生型マウスにPBSを投与したコントロール群に加えて、ダニを使用した喘息モデル、エラスターゼを使用した肺気腫モデル、papainを使用したACOモデルを用いてⅡ型肺胞上皮細胞を分離し、シングルセルRNA-sequencing 解析を行い、ACO群に特異的な細胞クラスターの同定に成功した。さらにⅡ型肺胞上皮においてACO群においてNGALの発現が高い事も確認された。さらに、NGALやRAGEに関して、各々のマウスモデルの肺組織検体を用いて、ISH解析や免疫染色を行い、発現の局在・分布を解析した。さらに、コントロール群とACOモデルマウスの肺組織検体を用いた空間的トランスクリプトーム解析(Visium)を施行し、ACOマウスモデル特異的な細胞の特性や細胞間相互作用について気道上皮細胞と免疫細胞・間質細胞を中心に着目して解析を行っている。さらに、ACOマウスモデルを用いてscATAC seq解析を行い、転写ネットワークとコアとなる転写因子を解析している。これらの解析を併せて今後報告していく予定である。
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