研究課題/領域番号 |
20K17205
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
吉田 光範 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 主任研究官 (70772630)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 肺MAC症 / 発症機序 / CHP2 / 遺伝子発現解析 / 細胞内pH / 自然免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
肺MAC症は患者数の増加が著しい慢性呼吸器疾患であるが、発症機序は解明されておらず、有効な治療法も確立されていない。申請者らのこれまでの解析から、肺組織において細胞内pH制御に関わるCHP2遺伝子の発現量の低下が肺MAC症の発症に関連していることが示された。本研究では、「CHP2 遺伝子の発現量が低下したことで、MAC感染時における宿主細胞のpH制御に基づいた炎症応答および殺菌機構が阻害される」という仮説を、発現解析や分子生物学的解析により検証する。MACに対する感染・発症防御にとって重要な分子機構を明らかにできれば、新規の治療薬や診断法の開発にも展開でき、国民の公衆衛生に大きく貢献できる。
|
研究実績の概要 |
肺Mycobacterium avium complex (MAC)症は、近年世界中で患者が増加している慢性呼吸器疾患であるが、発症機序は解明されておらず、有効な治療法も確立されていない。当研究グループのこれまで検討により、肺組織において細胞内のpH恒常性維持に関与するCHP2 (calcineurin like EF-hand protein 2)遺伝子の発現量低下が肺MAC症の発症に関連している可能性が示唆された(Namkoongら, 2021, ERJ)。本研究は、肺MAC症の新たな発症機序として「CHP2遺伝子の発現量が低下したことで、MAC感染時における細胞内pH制御に基づいた炎症応答および殺菌機構が阻害される」という仮説を立て、これを検証することを目的とした。今年度は、A549細胞株について、CHP2遺伝子ノックダウン株(CHP2KD)、CHP2遺伝子過剰発現株(CHP2OE)、および先行研究において肺MAC症の発症と有意に関連したCHP2遺伝子下流のSNP領域をCRISPR法によりノックアウトした変異株(CHP2DSKO1-4)に対する感染実験を実施した。具体的には、M. avium subsp. hominissuis TH135株にYPetを導入した株を感染させ、セルソーターをもちいた菌の感染効率評価と、感染後時間経過に伴う細胞内菌量をCFUあるいはハイコテントイメージングシステムにより評価した。野生型株と比較してCHP2DSKO細胞株では感染効率が上昇している傾向にあったが、いずれの細胞株においても感染後の細胞内菌量に有意な差は認められなかった。また、Ypet陽性となった細胞株をセルソーターにより回収しRNAを抽出して遺伝子発現解析を実施し、現在データをまとめている段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、昨年度に引き続き新型コロナウイルス感染症対策行動計画により研究活動を一部制限されたため、本研究計画遂行のための十分な時間を確保できずにいた。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、A549 CHP2KD, CHP2OE, CHP2DSKO1-4の感染実験については、使用する細胞の種類を含めた実験条件の再検討を行う。現在解析を進めているM. avium感染時の遺伝子発現プロファイルを解析し、抗酸菌感染におけるCHP2遺伝子および関連遺伝子の応答を明らかにする。その後、それぞれ細胞株について作成したCHP2KDやCHP2DSKOにおいて、MAC感染後時間経過にともなうケモカインや炎症メディエーターの発現をLuminex assayにより測定する。これらの検証が済んだ後に、現在作成を進めているCHP2 KOマウスを使用した感染実験を行う予定である。上記実験を通してCHP2遺伝子がMAC感染時の炎症応答に関与している可能性を検証する。
|