研究課題
若手研究
抗がん剤治療において慢性腎障害のリスク因子となる急性腎障害を予防することは、短期的・長期的にもがん患者の予後改善につながると考えられるため、その克服は重要である。近年、「フェロトーシス」という鉄依存性脂質酸化を介した新規の制御性細胞死が明らかにされ、様々な疾患との関連が示されている。本研究では、申請者のこれまでの研究を基にして、抗がん剤誘発性腎障害におけるフェロトーシスの役割を明らかにする。さらに、フェロトーシス制御による抗がん剤誘発腎障害の予防法・治療法を臨床応用へとつなげるための基礎的知見を集積する。
シスプラチン誘発腎毒性(CIN)の機序については、これまで多くの研究がされてきた。フェロトーシスは、鉄を介して誘導される非アポトーシス性の細胞死である。本研究では、CIN におけるフェロトーシスの役割について検討した。シスプラチンは、マウスの腎臓における鉄とヒドロキシラジカルが共局在化した。また、シスプラチンによって生じる腎機能障害、フェロトーシスマーカーの増加はフェロトーシス阻害剤であるFer-1によって改善した。さらに、鉄キレート剤であるデフェロキサミンもCOX-2と4-HNEの発現を低下させ、CINを抑制した。フェロトーシスはCINの病態に関与することが明らかとなった。
フェロトーシスがシスプラチン誘発腎毒性(CIN)の病態生理に関与していることを明らかにした。シスプラチン投与により、腎臓の鉄量とトランスフェリンレセプターの発現、第一鉄量が増加し、フェロトーシス阻害剤でCINが抑制された。このように、フェロトーシスは、総鉄および第一鉄の含有量を増加させることにより、CIN の病態生理に関与している可能性があり、その阻害は、CINの予防のための治療ターゲットとなりうることが示唆された。フェロトーシスが CIN の予防標的であることを確認するためには、さらなる調査が必要である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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