研究課題
若手研究
膵体尾部切除術後の膵液瘻は周術期死亡に繋がる最も重大な術後合併症である。膵液瘻予防を目的として、自動縫合器法等の膵断端閉鎖が試みられているが、膵液瘻発症率は19-65%と未だに高い。そこで申請者は、膵断端を緊縛して閉鎖するための膵断端処置具を新規に開発した。本研究では、ブタを用いて本器具による膵断端閉鎖と自動縫合器法とを比較検討し、膵液瘻予防効果における本器具の優位性について検証する。それに加え、本器具や自動縫合器法が膵に与える虚血性変化や病理学的変化を評価し、膵液瘻の病態解明を行う。本研究は、膵体尾部切除術における膵断端閉鎖法開発に新たな展開をもたらし、膵液瘻の病態解明に繋がると期待できる。
膵体尾部切除術後の膵液瘻は周術期死亡につながる重大な合併症であるが、未だに有効な膵断端閉鎖法が存在しない。そこで我々は、膵体尾部切除術後の膵液瘻予防を目的とし、膵断端処置具を開発した。本研究では、本器具と自動縫合器との耐圧試験、本器具の膵液瘻予防効果の検証を行った。結果、本器具は自動縫合器よりも耐圧能が高く、また、本器具を用いた実験では、術後膵液瘻を認めなかった。一方、自動縫合器では膵液瘻を認め、病理学的には膵管、動脈損傷を認めた。生体吸収性ポリマーで作成した本器具でも同様の実験を行い、膵液瘻を認めなかった。本研究では、膵断端処置具が膵体尾部切除術後の膵液瘻予防に寄与する可能性が示唆された。
膵体尾部切除術における従来法(自動縫合器法、手縫い法、小腸パッチ法)の問題点は、(A)膵実質に針やステイプルが入るため、膵実質損傷、膵管損傷が避けられない、(B)膵断端への血流調整が不可能、の2点に集約される。膵断端処置具による膵断端閉鎖は、(a)針やステイプルを使用しないので、膵実質損傷、膵管損傷が起こらない、(b)結紮力の調整が可能なため、膵断端への動脈血流温存が可能、という特徴を有し、従来法に対して大きな優位性を持つ。本研究により、膵断端処置具が膵液瘻予防、膵壊死予防に寄与する可能性が示唆された。本研究は膵体尾部切除術の安全性向上、術後補助化学療法のスムーズな導入に繋がると期待できる。
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Cureus
巻: 13(9)