研究実績の概要 |
D-Luciferinを用いた転移モデル A549, H441, H2009, LC-2/ad, H2228をそれぞれマウスの左心室内に移植し転移モデルを作成した。A549およびH441は多臓器への転移を認めたものの、H2009, LC-2/ad, H2228はIVISにて検出可能な転移はみられなかった。後者の細胞を移植したマウスの組織標本を確認すると、ごく少数の細胞により形成された転移巣を僅かに確認することができた。これらが微小転移のモデルになり得ると考えられた。 Akalucを用いた微小転移モデルの解析 上記実験よりH2009, LC-2/ad, H2228はマウスの左心室に移植することで微小転移を形成することが判明した。しかしながら従来のD-luciferinを用いたモデルではIVISで微小転移を検出することができず、また屠殺後の組織標本でも小さな転移巣を確認することは困難であった。そのため、D-luciferinに代わる新しい人工生物発光システム(AkaBLIS)と組織透明化技術(CUBIC)を用いて微小転移を可視化する実験へと移行した。AkaLuc遺伝子に赤色蛍光タンパク質mCherryもしくはVenusの遺伝子を連結した発現ベクターを肺腺がん細胞H2009に発現させた細胞株を作成し、上記と同様に転移実験を行なった。AkaLucを用いた解析ではIVISにおいてD-Luciferinでは検出できなかった転移巣を特定することに成功した。また経時的には移植後3週目までは発光が次第に消退していくが、3週目以降は発光部位が局在化し、一定の期間定常化した後、徐々に発光が強くなる傾向がみられた。これはがんの転移形成の初期段階の経過を見ているものと考えられた。
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