研究課題
若手研究
脊椎疾患患者の立位バランスは3次元的な動作解析によって評価すべきものである。モーションキャプチャーにより静止立位での体幹の動揺を実測してバランスの解析を行い、新たな立位動揺指標としての有用性を明らかにする。また健常者の基準値と比較することで疾患によって立位バランスの障害がどの程度影響を受けるのかを明らかにする。特に外来の診療環境で簡易で再現性の高い立位動揺指標を計測できるシステムの構築し、脊椎疾患における術後の立位バランス改善を定量的に評価し、また臨床的なアウトカム評価尺度との相関を検証することにより脊椎の手術適応における立位バランス改善の位置づけを明らかにする。
本研究の目的はモーションキャプチャーにより、静止立位での体幹(肩甲帯、骨盤)の動揺を実測してcone of economyの3次元的動作解析を行い、新たな立位動揺指標としての有用性を明らかにするである。Cone of economyとはDuboussetらがヒトの立位保持を逆振り子に例えて提唱したモデルであり、そのサイズが立位動揺の指標と考えられているが、重心動揺計などで得られるcenter of pressure(COP)の偏位測定による従来型のパラメータとの相関は明らかになっていなかった。成人脊柱変形に対し5椎以上にわたる初回固定手術を受ける患者で、立位保持困難のため計測ができなかった症例を除き、13名の術前後データが収集した。術前にC7及びS1棘突起直上に設置した体表面反射マーカーの動きを静止立位で30秒間ずつ3回、赤外線カメラで計測し、術後6か月に同様の計測を繰り返した。水平面における平均総軌跡長をCOE底面の外周長、中心からの偏位の平均実効値面積をCOEの底面積と捉えて記録した。同時に床反力計で計測したcenter of pressure(COP)の偏位測定による従来型立位動揺指標との相関を検証し、さらに術前後のCOEサイズを比較した。S1高位、C7高位ともCOEの平均総軌跡長はCOPの総軌跡長とは相関が無かった(r=0.03, 0.21)。一方で平均実効値面積はS1もC7もCOPの実効値面積と高い相関を示した(r=0.90, 0.85)。術後の平均実効値面積はS1もC7も術前と比較して有意に縮小を示した(p=0.04, 0.03)。成人脊柱変形患者の簡便で新たな立位動揺指標として、モーションキャプチャーによるCOEサイズ(実効値面積)測定の有用性が明らかになった。変形矯正術後にはCOEサイズは縮小し、立位バランスの改善を証明することができた。
3: やや遅れている
患者数がコロナ禍の影響で減少しており、現在も回復途上であるため、症例数の登録が不十分な状態である。Pilot studyとして必要最小限の登録を行い得たことによって学会発表を行うことができた。また当初の想定していたよりも、立位保持不能で計測そのものが危険な患者や、元々固定術を受けた症例の再手術など、モーションキャプチャーの解釈が困難な症例が多く、リクルートは当初の予想を下回るペースで推移している。
引き続き研究対象患者の登録を積極的に行い、データ収集に努める。特に脊柱変形矯正手術によってCOEが縮小することを証明し得たので、引き続いて手術による矯正の程度と、COE改善の程度の相関の証明や、成人脊柱変形の病因による違い(変形性脊椎症を背景とするde novo type、特発性側弯症遺残変形、圧迫骨折後後弯症)を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (47件) (うち国際共著 8件、 査読あり 47件、 オープンアクセス 21件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (3件)
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