研究課題
若手研究
慢性疼痛において、大脳辺縁系を含む中枢神経系の変化は情動面の恐怖や不安という感情にも関与しており重要であるとされている。本申請課題では、末梢組織から放出される骨代謝産物ならびに炎症性サイトカインならびにマトリックスプロテアーゼ (MMP) のような炎症性生理活性物質と大脳辺縁系における神経細胞の可塑性ならびに下行性疼痛抑制系との関連について分子基盤を解明すると同時に、これらの生理活性物質における生体逃避反応について、ホールセル・パッチクランプ法ならびに行動学を用いて解明することを目標とする。
近年鎮痛・抗不安作用を有するとされる視床下部オキシトシン(oxytocin; OXT)に、改変赤色蛍光タンパク1を標識したOXT-monomeric Red fluorescent Protein 1(mRFP1) トランスジェニックラットを用い、ホールセル・パッチクランプ法を用い、細胞内から電気記録した。2020年度は、炎症性生理活性物質のマトリックスプロテアーゼ (MMP)の薬理学的作用について検討し、pairing-protocolの電気刺激におけるLong-term potentiation(LTP)は、MMP-3 inhibitor UK 356618投与下では、誘発されないことを確認した。MMP-3は関節リウマチの活動指標とされる炎症性生理活性物質の一つである。2021年度は、関節リウマチのモデルのアジュバント関節炎ラットのOXT-mRFP1ニューロンにおいて、LTPが誘発されないことを確認した。また電気刺激である pairling-protocolでのLTPは、パッチしたOXT-mRFP1ニューロンでのpost-LTPであることを明らかにし、OXT-mRFP1ニューロンにおけるpost-LTPは、アジュバント関節炎ラットの視床下部OXT-mRFP1ニューロンの変化と捉えることが出来ると示唆された。2022年度は、OXT-mRFP1ニューロンでのLong-term depression(LTD)についても検討し、1Hz, 300回, -40mVの刺激を与えることで、OXT-mRFP1ニューロンにおいてLTDを引き起こすことを明らかにした。2023年度は国際論文に投稿作業をし、J Neuroendocrinol. 2023 Oct;35(10)にアクセプトされた。今研究で、OXTニューロンにおけるLTP・LTDと炎症モデル動物の分子基盤の関係性について解明した。
すべて 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Cell Reports
巻: 36(3) 号: 3 ページ: 109411-109411
10.1016/j.celrep.2021.109411
Molecular Pain
巻: 16 ページ: 1-15
10.1177/1744806920943334