研究課題
若手研究
卵巣胎児性癌はAYA世代の卵巣がんの半数を占める悪性腫瘍で、生物学的発生機序が分かっていないため早期発見の方法がない。若い進行癌患者さんは治療により妊娠できなくなってしまったり、治療の甲斐なく死に至るため、社会的損失は大きい。本課題では、近年報告されたリプログラミングを体内で誘導できる動物モデルを用いて、卵巣内卵子に多能性を誘導しこの癌が発生するかどうか調べ、発生する時の卵巣組織内での遺伝子発現の変化を明らかにする。「発病トリガーは適切ではない卵巣組織内でのリプログラミングによる多能性獲得」であるという仮説が証明されれば、早期発見腫瘍マーカーの探索に大きな貢献が期待される。
卵巣胚性癌(EC)は形態学的未熟生殖細胞からなる悪性腫瘍である。卵巣ECは卵子から生じるとされているが、動物モデルもなく発癌機序は未解明だった。そこで我々は、iPS細胞技術を応用し「リプログラミングが誘導できる」実験動物卵巣で、卵巣全体をリプログラミングし、発癌の形態学的・分子生物学的解析を行った。卵巣内ではリプログラミングを受けた、減数分裂前の卵子が単純性嚢胞を形成し、その中で癌発生が生じ、ECに至るのが観察された。またその際、少数のがん遺伝子の発現変化がECの増殖誘導と関係していた。ヒトEC細胞株でも同様の変化が検出された。我々のモデルはヒト卵巣ECの研究の強力なツールとなると期待される。
卵巣胚性癌(EC)はAYA世代に好発する卵巣悪性腫瘍であり、大部分の症例は進行癌で発見され、生命は助かるが妊孕性は失われることが多い。ECの発癌の原因はわかっておらず、早期発見法も確立されていない。我々の開発した発癌動物モデルは、卵巣からECの発癌を誘導する動物モデルを世界で初めて提供した。さらにこのモデルで、卵巣ECの発がんの形態学・分子生物学的機序を解明した。このモデルはECの早期発見方法開発や、化学療法開発などの研究で強力なツールとなることも見込まれる。また本研究は2023年5月に行われた第75回日本産婦人科学会学術総会の婦人科腫瘍部門でJSOG Congress Awardを受賞した。
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