研究課題
若手研究
本邦では出生数の減少、晩婚化・晩産化に伴うハイリスク妊婦が増加し、早産やそれに伴う未熟児が増加する社会問題が発生しています。早産の主原因は子宮内感染と考えられていますが、それを臨床的に診断することは非常に困難な一方で、適切な分娩帰結の時期を逸すると新生児感染に至り、致死的あるいは重篤な後遺症を残します。本研究の目的は、子宮内感染により羊水中で発生している事象を反映した特異的なバイオマーカーを探索することです。つまり、羊水中のマイクロRNAを探索・同定し、母体羊水中と血中とのマイクロRNA発現変化をデジタルPCR法にて検討して、子宮内感染を予測し、羊水穿刺の適応を診断する方法の開発を目指します。
子宮内感染の診断は、羊水穿刺による羊水評価がその診断精度を向上させることが示されていました。一方で、羊水穿刺は子宮穿刺に伴う出血、感染、破水、胎児損傷などのリスクを伴いました。今回の研究成果では、羊水中のmiR-4353とmiR-1915-5pが、絨毛羊膜炎の予測診断の炎症性バイオマーカーになり得ること、さらに母体血中と羊水中のmiR-4353とmiR-1915-5p相関していたことは、母体血中の評価により子宮内感染を評価できる可能性が示唆されました。
本研究は、母体血液検査において炎症バイオマーカーを選択することで、子宮内環境を評価できることを示しました。羊水穿刺を回避し、子宮内感染(組織学的絨毛膜炎)を出生前診断に低侵襲に予測診断できること社会的意義は高いと考えられました。また、羊水中の炎症性バイオマーカーを選択することにより胎児感染の有無を評価できる可能性が示唆された研究成果は、出生後の新生児治療において抗菌薬治療開始の科学的根拠を提供することの社会的意義は高いと考えられました。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Placenta.
巻: 114 ページ: 68-75
10.1016/j.placenta.2021.08.059
Future Science OA
巻: 6