研究課題
若手研究
口腔機能および多様な食事摂取による栄養状態の維持・向上は健康寿命の延伸につながることが報告されている。「オーラルフレイル」の概念が提唱されるなか、より早い段階から口腔機能の低下を把握・評価し、「食べる」機能へ口腔・栄養の両面からアプローチすることが重要である。しかし、口腔機能の低下が栄養摂取に与える影響は徐々に明らかになってきたが、口腔機能・栄養管理の複合的な指導・管理効果がどのように口腔機能・栄養状態に影響を与えるかのエビデンスは十分でない。本研究の目的は、口腔機能と栄養状態の相互関係を明らかにし、多職種が簡便に使用できる口腔・栄養が複合した患者教育・管理プログラムを開発することである。
2022年度は口腔機能・栄養状態の複合改善プログラムを作成することを目的として、その基礎データとなる内容の解析を行った。地域在住高齢者1693名を対象として、日本老年歯科医学会が提唱する「口腔機能低下症」のうち、年齢階級の上昇に従い低下がみられる咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧および咀嚼機能低下の4項目のうち3項目以上の低下がみられる項目について「口腔機能低下症4項目モデル」(以下、4項目モデル)として、分類および類型化を行った。本研究における4項目モデルの該当者は、このうち335人(19.8%)であり、内訳は下記の5つのグループに分類したところ、Group 1 舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能が低下している場合:25人(7.5%)、Group 2 舌口唇運動機能、舌圧、咬合力が低下している場合:62人(18.5%)、Group 3 舌圧、咀嚼機能、咬合力が低下している場合:27人(8/1%)、Group 4 舌口唇運動機能、咀嚼機能、咬合力が低下している場合:117人(34.9%)、Group 5 舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能、咬合力のいずれも低下している場合:104人(31.0%)に分類された。また、この4項目のうち「咬合力」および「咀嚼機能」のいずれかが維持されている群の対象者の属性(年齢、性別、現在歯数、栄養状態等)がきわめて近似していることからこれを1つのグループとし、「舌圧」が維持されているグループ、「舌口唇運動機能」が維持されているグループ、いずれの項目も低下が認められるグループの4つのグループに分類してアプローチ方法を検討する必要性が示唆された。
3: やや遅れている
当初計画していたとおりにデータの収集は完了したが、地域在住高齢者におけるデータの解析において、対象者の区分毎、および低下の状況ごとで追加で解析を行う必要が生じたため、当初予定していた論文投稿の時期が遅延している。
口腔機能低下症を年齢による低下項目とそうでない項目に峻別して検討を行う必要性が示唆されたため、今後の検討課題としては対象者数の増加および、本研究で得られた類型化ごとの予後の観察を行い、フレイルや低栄養と言った心身機能の低下の発現、および口腔機能管理等の介入による変化の推移を検討する必要があると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件)
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