研究課題/領域番号 |
20K18678
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
佐藤 仁 昭和大学, 歯学部, 講師 (00594954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | オートファジー / 神経障害性疼痛 / mTOR / 血管新生阻害薬 / 末梢神経損傷 / 下歯槽神経損傷 / ミエリン / 末梢神経障害 |
研究開始時の研究の概要 |
三叉神経損傷の多くは、主に歯科治療や口腔外科手術による医原性であることを特徴とする。神経損傷に伴い断片化したミエリンの分解・除去には、神経に関連する細胞のオートファジーが、末梢神経の効率的な再生に重要な役割を果たす。 本研究では、オトガイ神経知覚異常モデル動物を作製し、薬理学的にオートファジー活性を制御し、オトガイ神経の組織学的評価や機能的評価を行うとともに,拡散MRIの手法の一つで、ミエリンに特化した情報を得ることができるミエリンマップによる評価を行う。本研究は、患者の主観に依存する感覚機能評価を主体としてきた三叉神経損傷の診断・評価において、画像による客観的評価法の有用性を提唱する。
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研究実績の概要 |
口腔顎顔面領域の歯科治療や手術によって生じる三叉神経損傷は難治性であり、患者のQOLを大きく低下させることが報告されている。損傷を受けた三叉神経においては断片化したミエリンの分解と除去が行われ、シュワン細胞や血管内皮細胞のオートファジーが果たす役割が重要である。昨年度までの研究では、これらの細胞のオートファジーを促進させることにより、損傷を受けた三叉神経の効率的な再生が期待できることが示された。本研究では、下歯槽神経に損傷を加えることでオトガイ神経知覚異常モデルを作製し、ラパマイシンを用いて薬理学的に神経損傷部のオートファジーを活性化させている。ラパマイシンはmTOR阻害薬であり、損傷部位へのラパマイシンの投与によりmTORの下流に存在するリン酸化p70S6Kは発現レベルは切断された下歯槽神経の近位および遠位の切断面において減少することを明らかとした。この結果はラパマイシン投与が下歯槽神経損傷後の軸索再生を促進することが示唆されており、三叉神経節における脳由来神経栄養因子陽性ニューロンの数も有意に増加させることを明らかとした。これらの研究結果により下歯槽神経損傷により引き起こされる下唇の感覚障害からの回復は、ラパマイシンによって著しく促進されることが示唆された。 Q-spaceミエリンマップについては、解析に十分なMRIの解像度および撮影条件を現在、検討中である。MRI撮影に用いる実験動物についても、mTOR阻害剤やVEGF阻害剤の投与量などを調整している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述の通り、下歯槽神経の切断による下歯槽神経損傷モデルラットを用いて、損傷部位にmTOR阻害薬であるラパマイシンを投与するとオートファジーが促進され、損傷を受けた末梢神経の知覚異常からの回復が促進されることが明らかとなっている。VEGF阻害薬の投与は、現在、投与経路や投与量などを再検討しているが、末梢神経の再生過程における明らかな薬理作用は確認されていない。また、MRIを用いたQ-spaceミエリンマップについてはモデル動物の実験条件の設定やMRIの機器の撮影条件の設定を調整中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きMRIを用いた下歯槽神経損傷モデルにおけるミエリンマップの作製を行う。mTOR阻害薬の投与量を段階的に変更した群を作成し、Vehicle投与群とのミエリンマップの差を評価する。また、mTOR阻害薬とVEGF阻害薬を同時に投与することにより、シュワン細胞、あるいは血管内皮細胞のオートファジーが阻害され、ミエリンの除去・分解が促進されるかどうかについても検討する。
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