研究課題/領域番号 |
20K19319
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
秦 若菜 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (50448958)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | 吃音 / リハビリテーション / リハビリテーション効果 / 言語聴覚療法 / 発話行動の変容 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、言語聴覚療法(統合的アプローチ)を施行された吃音者の発話について、治療の前・治療終了時・終了後3ヶ月以上経過時を比較して、吃音症状の変化を客観的に評価することで、吃音者に対する言語聴覚療法の治療効果を明らかにすることを目的とする。 吃症状および対象者の主観的評価を測定し、治療回数および治療時間、治療に用いた手法について調査する。吃症状の評価は、吃音の治療に直接関与しない言語聴覚士が音声分析ソフトを用いて視覚的・聴覚的に確認しながら症状の頻度(%)と症状最長持続時間(ms)を測定する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、吃音者の発話が言語聴覚療法の前後でどのように変化するか明らかにすることを目的とした。流暢性スキルの習得を目指す治療法を用いた3回の治療後に発話行動の変化がどのように生じたのか、音響的な複数の指標を用いて、その変化を検証した。 参加者は吃音者42名(男性34名、女性8名)、平均年齢26.5歳(16~56歳)であった。治療前と3回の治療実施後の文章の音読を比較した。音声信号は、音響分析ソフトウェアPraatを使用して分析した。読み始めから終わりまでを所要時間とした。さらに、安田ら(2012)に基づいて、①調音部分(articulation) ②ポーズ(pause) ③吃症状部分(stuttering)の3つに区分し、それぞれの継続時間を測定した。各区分の境界は音声波形と広帯域スペクトログラムを表示して、視覚的、聴覚的に確認した。さらに、前述の3つに分類された測定結果を用いて、調音速度、ポーズ数、ポーズの平均持続時間、吃頻度を算出した。 3回の治療実施後には吃頻度の平均が18.2%から2.2%へ有意に低下(p < .01)し、治療効果が確認された。また、調音速度が7.24(±1.30)モーラ/secから6.05(±1.43)モーラ/secへと有意に低下した。ポーズ数が23.5(±8.4)回から18.9(±1.43)回へと有意に減少し、文間ポーズ平均持続時間が1.26(±2.53)secから1.72(±1.03)secへと有意に延長した。治療前の成績はポーズ数とポーズの平均持続時間の間に有意な相関(r=0.42)が認められた。3回の治療実施後においては調音速度と文節間ポーズ平均持続時間との間に弱い負の相関(r=0.39)がみられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は2020年度よりスタートしているが、2020年度に新型コロナ感染症拡大の影響を受け、教育業務など他業務に多大な時間を費やす必要があったため、研究業務に対して十分な時間をかけることができなかったた。また、対象に対する当該施設への立ち入りが不可能になったことにより研究計画の策定・研究準備に時間がかかった。以上により、研究の遂行が当初予定より遅れていた。2021年度から2022年度においてもその影響を受け、研究の遂行が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、吃頻度の低下に伴ってどのように発話行動が変化するのかを明らかにした点で流暢な発話の獲得において、アプローチすべき要素を明確にすることができた。これは、効果的かつ効率的なリハビリテーションの実施に寄与するものであると考えている。しかし、本研究の評価は治療継続最少回数における観察であり、今後はリハビリテーションの終了時点の発話を検証する必要がある。また、その後リハビリテーションの効果がどの程度持続するのか、リハビリテーション終了後に発話は変化し得るのかという点についても明らかにすることが今後の課題である。
|