研究課題
若手研究
骨格筋量は加齢や運動負荷の減少(寝たきりなどのunloading環境)によって低下することが知られている。これら筋萎縮の誘導因子についてはミトコンドリアの機能低下や酸化ストレスの産生亢進、鉄代謝異常など様々な報告が為されている。しかし、未だ筋萎縮発生メカニズムの全容は不明な点が多く、筋萎縮に対する根本的な治療法は存在しない。そこで本研究では、抗酸化因子として知られるHO-1に着目して、これらの代謝異常が引き起こされるメカニズムを解明し、HO-1を介した筋萎縮治療法について検証する。
骨格筋量を維持するためには、鉄代謝とミトコンドリア代謝の関係が重要である。これまでの研究では、鉄欠乏がミトコンドリアの機能低下や筋細胞の異常を引き起こすことが示されている。本研究では、鉄量の変動が筋細胞の代謝にどのような影響を与えるかを調査した。結果として、鉄キレート剤であるDFOの処理によってミトコンドリアのタンパク質やたんぱく質合成のバランスが低下し、筋機能も低下することがわかった。また、筋萎縮モデルでは、鉄量の変動が筋萎縮関連遺伝子発現に影響を与えることも示された。これらの結果から、筋細胞内の鉄代謝とミトコンドリア代謝の相互関係が筋萎縮の発症に関与している可能性が示唆された。
本研究を通して、鉄・エネルギー代謝異常から筋萎縮へと繋がる新規経路が明らかになり、大きな学術的意義を持つ。さらに、萎縮環境における鉄付加で筋萎縮抑制傾向がみられたことは、寝たきり状態や消耗性疾患等による筋萎縮を予防するために、食事やサプリメントとしての鉄付加が有効である可能性を示唆しており、社会的意義も大きい。
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