研究課題/領域番号 |
20K19950
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
鄭 峻介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40710661)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 樹木年輪 / 東シベリア / 永久凍土 / 異常気象 / 気候変動 / 脆弱性 / カラマツ |
研究開始時の研究の概要 |
北半球高緯度域、東シベリアの永久凍土帯では、気温上昇に伴う豪雨などの異常気象の頻度増加が観測・予測されている。近年、異常気象による樹木衰弱・枯死も報告され始めている。本研究では、東シベリアのタイガ林、及びタイガ-ツンドラ境界域において、優占樹種であるカラマツの年輪幅を指標として、異常気象に対する樹木の応答・脆弱性を明らかにする。近年の気候変動で急変している東シベリア生態系の変動の理解を深め、将来の気候変動下において、事前の予測に基づいて先に対策を講じることで生態系の回復力を維持する、予見的適応策決定に必要な科学的根拠を提供する。
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研究実績の概要 |
東シベリアの森林生態系における過去150年間の樹木成長量変動特性を明らかにするために、樹木年輪国際データベース(ITRDB)を活用したデータ解析を実施し、これまでに理解が進んでいない突発的に生じる極端な成長量減少イベントについて調べた。その結果、成長量の減少とその後の回復パターンが南北で異なっており、南部のサイトにおいては成長量減少後の回復が不十分なため、成長量が以前の水準まで回復するのにより多くの時間を要するケースが多かったことが明らかとなった。 東シベリアの28サイトにおける樹木年輪幅時系列から、過去150年間においてサイト内の多くの個体で極端に成長量が減少した特徴的な年(成長量極端減少イベント)を抽出し、その際の抵抗・回復・回復力(樹木年輪幅時系列から算出され、樹木脆弱性の指標として利用されている)を算出したのち、それらの関係性について調べた。低温が厳しい北部のサイトでは、回復(イベント時に対するイベント後の成長量比)については値のばらつきが大きく、抵抗(イベント前に対するイベント時の成長量比)は小さな値の範囲に集中的に分布していた。一方で、乾燥が厳しい南部のサイトでは、抵抗は値のばらつきが大きく、回復が小さな値の範囲に集中的に分布していた。その小さな回復のため、南部のサイトにおいては、回復力(イベント時の減少量で重みづけしたイベント前後の成長量比)が小さく、成長量の回復により多くの時間を要するイベントの推定頻度が高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ロシア・ウクライナ国際情勢の影響により、東シベリアのタイガ林サイト(ヤクーツク; 62N, 129E、エレゲイ; 60N, 133E)、及びタイガ-ツンドラ境界域サイト(チョクルダ; 70N,149E)で予定していた現地調査を、令和2-3年度(COVID-19の影響により中止)に引き続き、令和4年度も中止せざるを得なかった。 そのため、令和4年度後半より樹木年輪国際データベース(ITRDB)等を活用したデータ解析を東シベリア広域で進めてきたが、各樹木個体のサイズ・微地形環境の情報は付随していないため、それらを考慮した解析は進められていない。
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今後の研究の推進方策 |
樹木年輪国際データベース(ITRDB)等を活用するデータ解析を実施し、過去150年間における樹木成長量変動と気候変動との関係性を東シベリア広域で明らかにする。特に、これまでに理解が進んでいない突発的に生じる極端な成長量減少イベント(成長量極端減少イベント)に着目した解析を進める。令和4年度には、東シベリア広域を対象として、ITRDBの樹木年輪幅時系列から成長量極端減少イベントの時空間分布について調べ、成長量の減少とその後の回復パターンが南北で大きく異なっていたことを明らかにした。令和5年度は、それら成長量極端減少イベントの規模・頻度と気候変動との関係性について評価する。具体的には、過去120年間の観測ベースの気温・降水量時系列 (Climate Research Unit 0.5°月平均グリッドデータ)を用いて、東シベリア広域で観測される異常気象を、それぞれの種類 (極端な高温/低温、大雨/干ばつ)・規模(10・30・50・100年に1度)・長さ毎に整理する。その後、成長量極端減少イベントの規模・頻度との関係性、さらには、その際の抵抗・回復・回復力との関係性を評価する。特に、先行研究から樹木脆弱性評価により重要である可能性が指摘されている回復力に着目し、その値が低い個体の割合が高いサイト、さらには、そのようなサイトの割合が高い地域を抽出し、樹木脆弱性への気候変動影響を重点的に明らかにする。
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