研究課題
若手研究
近年の氷河や氷床の急激な融解要因として,雪氷面のアルベド(太陽光の反射率)の低下が指摘されている.このアルベド低下の要因の一つとして,雪氷藻類と呼ばれる耐冷性微生物の繁殖によって発生する赤雪現象が挙げられる.しかしながら,現地観測例の少なさなどから,赤雪の出現要因とその雪氷融解効果には不明な点が多い.赤雪現象による雪氷融解を定量評価するためには,積雪の生物および光学過程に基づいた数値モデルの開発が必要である.本研究では,北極圏の積雪での観測に基づいて赤雪発生の要因解明および赤雪推定モデルの開発を行い,そのモデルを全球陸域モデルに組み入れて,北半球全域の赤雪現象の雪氷融解への寄与を評価する.
本研究開始時は下記の課題を掲げ、想定以上の成果が3年間で得られた。・氷河観測に基づく赤雪の予測モデル開発と、陸域モデルを利用した赤雪による北極圏の雪氷融解への寄与推定研究期間全体の特筆すべき成果として、世界初の全球の赤雪発生を予測する全球積雪藻類モデルBio-MATSIROの開発に成功し、全球規模で赤雪による雪氷融解への寄与が推定できるようになった。研究期間の後半では、研究対象を赤雪藻類以外の雪氷生物にも広げ、氷河氷床面を暗色化させる緑藻の増殖モデルやクリオコナイトホールの崩壊モデルの開発に成功し、Bio-MATSIROの拡張が期待される。これらの成果は国際誌に論文として出版されている。
本研究で開発したBio-MATSIROを用いることで、雪氷微生物活動によるアルベド低下効果(バイオアルベド効果)を計算し、近年の雪氷融解加速の微生物活動による寄与を全球規模で評価できるようになった。バイオアルベド効果はIPCC第6次評価報告書で初めて取り上げられた新しい現象で、その効果を明らかにすることは学術的意義がある。本研究成果は、今後さらに発展させることでIPCC次期評価報告書に記載される可能性があり、国際社会への貢献も期待できる。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (6件)
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