研究課題/領域番号 |
20K20558
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
数間 恵弥子 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (50633864)
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研究分担者 |
LEE SEUNGRAN 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 協力研究員 (50862174)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2020年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
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キーワード | 走査型トンネル顕微鏡 / 単一原子触媒 / 光化学反応 / 単一分子反応 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、新たな触媒材料として、酸化物などの担体に単一の金属原子が分散して取り込まれた「単一原子触媒」が注目を集めている。触媒作製法の探索や反応性の評価が進められる一方で、触媒作用の機構は未解明である。本研究は、原子レベルの空間分解能をもつ走査型トンネル顕微鏡を用いて、触媒表面の活性点である単一金属原子の電子状態ならびに単一分子の光化学反応を実空間で観測・解析し、光化学反応を誘起する単一原子触媒における触媒作用の機構解明を目指す。
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研究実績の概要 |
酸化物などの担体に単一の金属原子が分散して取り込まれた「単一原子触媒」が近年新たな触媒材料として注目を集め、光化学反応を誘起する単一原子触媒も開発され始めている。単一原子触媒の反応は単一金属原子上で起こると考えられているにもかかわらず、空間分解能がない計測手法の平均的な応答に基づき機構が議論されてきたため、触媒作用の機構は未解明である。触媒機構の解明には、活性点の局所電子状態解析と反応の実空間観測・解析が必要不可欠である。本研究は、光化学反応を誘起する単一原子触媒における触媒作用の機構解明を目指す。原子レベルの空間分解能をもつ走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、触媒表面の活性点である単一金属原子の電子状態評価ならびに単一分子の光化学反応を実空間で観測・解析することで、単一原子触媒中の単一金属原子がどのように反応に寄与するのかといった基礎的知見を獲得し、触媒の設計指針を提案する。 本研究ではパルスレーザー堆積(PLD)装置を用いて単原子触媒を作製する。初年度である2020年度は、現有のPLD装置に金属原子をスパッタするための機構を組み込む改良を行った。担体としてアナターゼ酸化チタンを最初の検討対象とする。STMで測定可能な導電性の試料を作製するため、導電性酸化物の上にアナターゼ酸化チタンを作製するための条件を探索した。まず、格子定数を考慮し導電性酸化物の下地となる2種類の基板を用いてその上に導電性酸化物を作製し、さらにその上にアナターゼ酸化チタンの薄膜を作製した。X線結晶構造解析と原子間力顕微鏡による表面分析を行い、どちらの基板上に結晶性の高いアナターゼ酸化チタン薄膜を作製可能か調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、初年度は分担者の李がPLD装置にスパッタ装置を組み込む改良を行い、単一原子触媒の担体となる酸化物の作製と条件の最適化、構造解析を行った。担体としてアナターゼ酸化チタンを最初の検討対象とした。STMで測定可能な導電性の試料を作製するため、導電性酸化物であるルテニウム酸ストロンチウムの上にアナターゼ酸化チタン薄膜を作製するための条件を探索した。まず、格子定数を考慮しルテニウム酸ストロンチウムの下地となる2種類の酸化物基板を用いた。PLDにより酸化物基板の上にルテニウム酸ストロンチウムを作製し、さらにその上にアナターゼ酸化チタンの薄膜を作製した。作製した酸化チタン薄膜のX線結晶構造解析と原子間力顕微鏡による表面分析を行い、どちらの基板上に結晶性の高いアナターゼ酸化チタン薄膜を作製可能か比較検討した。以上の検討内容は研究計画に沿って行われたものであり、研究の進捗はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って、初年度に引き続き次年度においても、PLDによる単一原子触媒の作製と条件の最適化および構造解析を行う。初年度に見出した最適な酸化物基板を用いて結晶性が高く表面が原子レベルに平滑なルテニウム酸ストロンチウムの作製条件を最適化する。X線結晶構造解析、反射高速電子線回折および原子間力顕微鏡に加えてSTMによる表面分析も行い、作製した試料の評価を行う。まずPLDにより作製した試料で大気に暴露した表面の構造をSTMにより観察する。さらに試料を加熱することで表面の清浄化が可能かどうか検討を行う。結果に応じて、試料を大気に曝さずSTMチャンバーに搬送できる容器を使用し、PLDで作製直後の試料をSTM観察し、原子レベルの空間分解能で表面構造を評価する。結晶性が高く表面が原子レベルに平滑なルテニウム酸ストロンチウムの作製条件を見出し、さらに最適化したルテニウム酸ストロンチウムの上にアナターゼ酸化チタン薄膜を作製し、同様の分析手法により評価し、結晶性が高く表面が原子レベルに平滑な酸化チタン薄膜の作製条件を最適化する。最適化した試料表面をSTMにより観察し、原子レベルの構造解析と表面の局所電子状態解析を行う。
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