研究課題/領域番号 |
20K20593
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分48:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
塗谷 睦生 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (60453544)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2022年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2021年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2020年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 組織内水 / 脳 / ケミカルイメージング / 分子動態 |
研究開始時の研究の概要 |
脳の機能は、脳組織内における分子やイオンの伝達により支えられています。よって、これらの物質の脳組織内における動きの理解は、脳機能の理解に必要なものとなります。ここで、脳は他の組織同様、水に満ちた組織で、これらの分子の動きは、それを溶かしている水の動きにより制御されていると考えられます。つまり、脳機能の理解には、脳内の水の動きとその制御の理解が必要となります。しかし、水分子はサイズが小さいことから、可視化して研究することが困難でした。本研究では、このような技術的な困難を、新たな顕微鏡技術を応用することで乗り越え、脳の中の水の流れとその制御を明らかにし、脳機能の理解を促進することを目指します。
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研究実績の概要 |
近年、脳の機能が溶質であるイオンや生理活性物質に加え、それらの共通の溶媒である脳組織内の水の量や状態によって強く制御されているという概念が提唱されるようになった。しかし、脳は光を通し難く、また、水はラベルが困難なため、脳組織内における水の可視化解析は非常に困難であった。本研究はこれらの問題を、組織透過性が高い近赤外光を用い、分子の固有振動を捉えることで可視化するラマン散乱顕微鏡を適用することで乗り越え、脳内水動態の可視化解析を図るものである。 本年度は、これまでに開発に成功したSRS(stimulated Raman scattering)シグナル検出系を備えたマルチモダル多光子顕微鏡システムを用い、マウスから調製した急性脳スライス内での水と溶質の挙動の解析を試みた。まず、このシステムを用いることにより、SRSにより水を脳組織深部において高い空間分解能で検出でき、同時に脳組織に導入した蛍光色素を2光子励起し蛍光シグナルを検出できることが明らかとなった。更に、重水と軽水をSRSにより容易に区別できることも確認した。そこで本年度は、脳組織に重水と蛍光色素を導入し、それを経時的に観察することで、脳組織内への水と蛍光色素の拡散を捉え比較することを試みた。ここから、脳組織内において水の動きを捉えることに成功し、溶質との違いを定量的に解析することに成功した。これを異なる発達段階のマウスから調製した脳スライスおよび脳スライスの虚血モデルに適用したところ、これらの条件下において色素の組織内動態は変化するものの、水の動態は変化しない、安定なものであることが明らかとなった。これらの結果は、脳組織内における水の動態は変化に対して非常に安定なものであり、色素とは全く異なる特徴を持つものであることを示しており、更にこれは脳内水動態の理解には水を直接見ることが必要不可欠であることを示唆するものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初の予定通りに研究が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記した通り、これまでに、脳組織内の水をSRSで、それと同時に細胞形態や溶質分子を蛍光分子の2光子励起により同時に可視化するマルチモダル多光子顕微鏡系、そしてその解析方法の確立に成功した。今後はこの独自のシステムを活かすことで、脳組織内における水と溶質の動態を捉え、その様々な条件下における変化などに関する知見の獲得を試みて行く。特に、通常の組織に加え、薬理学的・遺伝学的手法による水動態の制御候補因子の機能調節と合わせることで、脳内水動態の制御機構に関する知見の獲得を図る。更に、これまでマウスから調製する急性脳スライスを用いて研究を行ってきたが、生きた動物における計測に向け、in vivo対応型のシステムの構築を試みる。
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