研究課題/領域番号 |
20K20679
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 明治大学 (2022) 金沢大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
神谷 嘉美 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (90445841)
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研究分担者 |
関根 由莉奈 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (00636912)
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40409462)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 黒漆 / 漆着色 / 鉄イオン / XAFS / 加速劣化試験 / ウルシオール / 桃山文化期 / 平蒔絵 / 東南アジア交易 / 漆液 / 文化財分析 / 漆黒 / 漆器 |
研究開始時の研究の概要 |
漆芸分野における「黒漆」や「平蒔絵」に関する研究は時代を問わず、自然科学的な分析による痕跡の抽出と確認がきわめて低調だった。識別は目視レベルで行われるため、平蒔絵技法に用いる金属材料は微小すぎて形状の把握は困難で、実際に使用した平蒔絵材料そのものの識別研究は少ない。しかし美術史で平蒔絵と同一視されていても、実際には「鑢粉」と「消粉」が混在することを見出している。そこで材料の再現復元の検討と自然科学的な分析手法を組み合わせた研究を行い、漆塗膜の黒色化技術ならびに異なる微粉金属を利用した平蒔絵技術の実態解明に資する検証法の確立を目標に取り組む。
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研究実績の概要 |
重要文化財に指定されている滋賀県聖衆来迎寺所蔵の三具足の再現復元を目指すプロジェクトに参加する機会を得て、2021年度にこの香炉をモデルとして7種類の漆着色した試験片を作製して紫外線照射による加速劣化実験を行った。本年はこれらの研究結果をまとめ、文化財保存修復学会第 44 回大会で発表して、漆を用いた金工品の黒色化技法についての議論を深める情報を提供した。 また鉄分添加によってつくられる「黒漆」のXAFS実験によって、生漆の中で鉄の状態がどのように変化するのかを議論できる可能性が出てきた研究の結果は、情報を整理して英語論文としてまとめた。 一方でCOVID-19の流行とウクライナ情勢によって、当初計画していた実験に支障が出た。そこで過去の実験では手法ごとの差異を検証するには至らないと判断していた赤外分光法について再度の検証を行った。結果として、新たな解析ソフトウェアを利用しながら検証すると、解析精度が向上して手法ごとの差異を見出だせる可能性があるとわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の流行が続き、当初計画していたX線吸収微細構造解析(XAFS)法を用いた複数の黒色塗膜の構造解析の実施に支障が出た。さらにウクライナ情勢の影響で、熱分析に必要なHeガスが入手できず、加速劣化試験を行った複数の黒色塗膜サンプルを対象とした検討を進めることが困難であった。分析可能なサンプルがありながら実験計画に支障が出たことを改善できなかったことから「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ウクライナ情勢の影響で実験に必要なHeガスが入手できず、熱分析での検討を進めることが困難であったが、新たに装置を借りての実験ができる状況となってきたため、今後は着実に測定を実施していく予定である。進展が遅れていた実験を着実に行うことで、加速劣化試験を行った複数の黒色塗膜サンプルを対象とした塗膜の解析を進め、手法ごとを比較するための基礎的データの収集と整理に努める。また、差異が小さいと判断していた分析手法について、再検討の意義が高まるデータを得たことから、今後の検討項目に追加して測定を行っていく。
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