研究課題/領域番号 |
20K20767
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
尾崎 祐介 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (80511302)
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研究分担者 |
大倉 真人 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (50346904)
川村 哲也 帝塚山大学, 経済経営学部, 講師 (20643505)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 認知 / 予備的動機 / 慎重 / 節制 / あいまい性 / 経済実験 / 資産形成 / 高次リスク選好 / 認知コスト / フレーミング効果 / 高次選好 / 曖昧性回避 / 損失回避 / 労働 |
研究開始時の研究の概要 |
少子高齢化と長寿化の進行によって、老後に備えた資産形成が重要な社会問題になっている。一方、老後の資産形成に現役世代が消極的であるという現状がある。以上を踏まえて、本研究は「老後に備えた資産形成を阻害する心理的な障壁」を経済実験によって明らかにすることを目的とする。本研究では多くの現役世代にとって資産形成の原資が労働所得であることに着目し、それが資産形成を阻害する原因であると考え、その考えを経済実験によって検証する。
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研究実績の概要 |
老後に備えた資産形成を考える際、(ノイマン-モルゲンシュテルン型)効用関数の三階微分、四階微分の符号が重要な役割を果たすことが知られている。三階微分が正の場合を慎重(prudence)、四階微分が負の場合を節制(temperance)と呼ぶ。また、実証研究においても Trautman et al. (2014, REStud) などにおいて両者の関係性が確かめられている。興味深い知見として、理論的には慎重、節制の両方が重要な役割を果たしている。しかしながら、既存の経済実験では、慎重については頑健に観察されている一方で、節制については両方の結果が混在している。この結果は、人々の真の選好を反映しているのか、あるいは、他の要素の影響なのかという疑問が生じてくる。本研究課題との関連でいけば、仮に真の選好を表しているとすれば、老後に備えた資産形成については専ら慎重に着目すれば十分であるという帰結になる。今年度は、このリサーチクエスチョンに対して、認知的負荷を加えるというトリートメントを加える経済実験を行うことで、一つの解答を与える研究を行った。慎重と節制を検証する経済実験では、節制が慎重よりも複雑な選択を行っており、それが既存研究での経済実験の観察と関連している可能性があるからである。実験で得られた結果として、認知的負荷は慎重に影響を与えていたが、その影響はそれを強める方向と弱める方向の両方であり、それらの影響が打ち消しあうことにより、平均的には認知的負荷が慎重の選択には影響を与えないという結論が得られた。つまり、経済実験で観察されている慎重と節制の違いが、その複雑さに起因することを否定したことを示唆する結論が得られた。この研究に関しては、データの収集は終えており、今年度、論文としてまとめる予定である。その他として、信頼とあいまい性選好の研究などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、老後の備えを阻害する非金銭的な要因について経済実験を通じて検証することを目的としている。2020年度から新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが始まり、本研究課題で必要な経済実験の実施が難しい状況に陥った。その一部については、非接触型のオンライン経済実験により代替したが、何らかのトリートメントが必要な場合はオンライン経済実験による代替が困難であった。それが、本研究課題の進捗状況が「遅れている」理由である。2022年頃から、一部で対面型による経済実験が実施できる状況にあり、その機会を利用して、対面型の経済実験を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究に関しては大きく二つの柱がある。一つ目は経済実験が終了した論文に関しては、その分析を行い、それらを論文としてまとめることである。二つ目は経済実験を実施したうえで、論文としてまとめていく研究である。それらのバランスを慎重に鳥ながら、研究を進めていく。一つ目はに関しては、認知的負荷と慎重、節制との関係を明らかにした研究である。この研究に関しては、国内の学会での報告も行っており、国際学術誌の掲載を目指して論文をまとめる段階にある。二つ目はいくつかの経済実験を並行して進めている。例えば、昨年度後半に相対的リスク回避度を文脈から独立した形で検証する経済実験を進めてきた。この研究に関しては、現時点ではサンプルサイズが十分でないため、追加の実験をする必要がある。追加の経済実験が終了してから、速やかに論文をまとめる予定である。いくつかの経済実験を企画しているが、原則として、今年度内に論文化する予定なので、なるべく前半に経済実験の実施をして、後半に論文をまとめるという流れで進めていくようにする。そのために、研究代表者、研究分担者が所属する早稲田大学、関西大学の両方で経済実験を実施していく予定である。
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