研究課題/領域番号 |
20K20882
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分12:解析学、応用数学およびその関連分野
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | free probability / random tensors / ランダムテンソル / 自由確率論 / ランダム行列 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではWeingarten解析,Non-backtracking理論などのランダム行列の研究で深めた技法をテンソルの設定の場合まで拡張を進め,より高次のテンソルに値を取るランダムテンソルの研究を行う.確率論で言う大数の法則や中心極限定理のようなサイズの大きい場合の不変量や摂動を計算する系統的なアプローチを作り上げ,ランダムグラフ,量子情報理論, 機械学習におけるランダムテンソルについての問題を解決を目指す.
|
研究実績の概要 |
Razvan Gurau氏, Luca Lionni氏とともに「The tensor Harish-Chandra--Itzykson--Zuber integral II: detecting entanglement in large quantum systems」をまとめて、投稿、その後それを改訂し、専門誌「Communications in Mathematical Physics」に掲載が確定した。この論文では最近導入されたHarish-Chandra--Itzykson--Zuber積分のテンソルへの一般化を考え、そのテンソルのサイズNを大きくとったときの漸近挙動を調べた。この研究では、外部テンソルの大きさに対するスケーリングについて仮定している。我々は、漸近スケーリングの2パラメータクラスを解析し、いくつかの非自明な漸近レジームを明らかにした。この研究は、多粒子量子系のエンタングルメント特性の解析に関連する。特にランダム化された局所測定の文脈で、この領域への我々の結果の応用の可能性について議論した。 またZhi Yin氏, Liang Zhao氏, Ping Zhong氏とThe spectrum of local random Hamiltoniansをまとめてアーカイブに投稿した(arXiv:2210.00855)。この研究から以下のことがわかった。局所ランダムハミルトニアンのスペクトルは、その局所項の確率分布のいわゆるepsilon-free畳み込みによって表すことができる。そのスペクトルを研究するために、epsilon-non-crossing partitionsとpermutationsの集合の間に同型性を示した。さらに、ハミルトニアンの最大固有値の下界と上界を導出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で多くの研究集会や国際会議などのイベントや研究者の招聘、特に海外に関連するようなものがキャンセルされた。しかし、コロナによる影響を最大限に回避すべく、代替案を考えたり、オンラインを活用することにより、研究が滞ることないよう進めることができた。実際、2023年2月から作用素値非バックトラッキング法の共同研究を長年代表者と行っているCharles Bordenave氏が京都大学に長期(5ヶ月)滞在してくれている。氏と本研究課題の根幹部分である作用素値非バックトラッキング法について多くの議論をし、ランダムテンソルへのその適用を進めている。また、氏の来訪時期に共同研究者の佐久間紀佳やランダムテンソルの専門家のLuca Lionni氏が京都大学に来訪し、上記「The tensor Harish-Chandra--Itzykson--Zuber integral II: detecting entanglement in large quantum systems」で残された問題について議論した。またZhi Yin氏の博士課程の学生であるLiang Zhao氏が2022年夏に長期に京都大学に滞在し、上記の「The spectrum of local random Hamiltonians」について深く議論し完成させた。上記の研究をさらに発展させる計画を立て、研究代表者の博士課程学生の宮川らをメンバーに加えてさらにSpeicherとWysoczanskiが提唱したepsilon-自由確率論の研究を深めている。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響はかなり小さくなり、海外ではほとんど平常通りに研究会が開催され、日本でも対面研究集会が増えてきている。対面による議論や意見交換は研究上欠かせないものであるので、積極的に海外の研究研究者を訪問したり研究会を開催していきたい。実際、2023年6月には京都大学の数理解析研究所で「RIMS Research Project 2023: Stochastic Processes and Related Fields」の一環のイベントとして本研究課題に非常に深く関わる「Random Matrices and Applications」という国際会議を開く。この研究集会には25人程度の招待講演者を招聘し、ポスター発表も合わせると40程度の発表がなされる。そこで一気に関連の最新の研究情報を収集し、研究を再加速する。また2023年度Charles Bordenave氏が前期の間7月まで滞在しているため氏と進めている作用素値非バックトラッキング法のランダムテンソルへの応用の研究をより深め、本研究課題目標である確率論で言う大数の法則や中心極限定理のようなサイズの大きい場合の不変量や摂動を計算する系統的なアプローチを作り上げ,ランダムグラフ,量子情報理論, 機械学習におけるランダムテンソルについての問題を解決を目指す。また秋には統計数理研究所でランダム行列のイベントを開催し量子情報理論やlocal random Hamiltoniansなどの共同研究を行ってきたPing Zhongらと議論を行う。可能であればフィールズ研究所の自由確率論のイベントなどにも参加し、研究成果のアピールと情報収集を行いより研究をシャープなものにしていく。
|