研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究は、科学観測、情報・通信、医療・バイオ、セキュリティ分野などで近年急速に実用化が進む「テラヘルツ波」において、その基礎技術課題の一つである「伝送」の技術開拓に着目する。特に、電波望遠鏡用受信機に使用される導波管立体回路において、完全導電性を有する超伝導金属を材料とする「超伝導導波管」を用いることより、その伝送損失を極限まで低減させる新しいアイデアの実証実験を行うことを目的とする。本研究による超伝導導波管の製作・評価技術の確立および伝搬特性の理解は、テラヘルツ帯導波管コンポーネントの実現における重要な足掛かりとなり、電波望遠鏡の新たなディスカバリースペースの開拓に繋がることが期待される。
本研究は、ミリ波~テラヘルツ波帯電波望遠鏡の受信機に使用される立体伝送路である導波管の伝送損失を極限まで低減させるための新しい技術を提案し、その実証実験を行った。具体的には、完全導電性を有する超伝導金属を導波管壁面の材料とする「超伝導導波管」を製作し、極低温下で伝送特性を測定することによって、従来の常伝導金属製の導波管と比べて伝送損失を大幅に低減可能なことを示した。さらに、三次元電磁界シミュレーションを用いて測定結果を解析することにより、超伝導矩形導波管の主要な伝送モードを考察した。以上により、世界初の超伝導導波管の実用化に向けた製作技術の確立、伝送特性の解明、有用性の実証に成功した。
電波と赤外線の境界に位置する電磁波領域である「ミリ波~テラヘルツ波」は、エレクトロニクスとフォトニクス技術が適用される境界領域に位置し、最後の未開拓波長帯と言われている。科学観測のほか、情報・通信、医療・バイオ、セキュリティ分野などでの応用が期待されている一方、既存の技術では発振・伝送・検出が困難であり、それが未開拓領域として残されている所以である。本研究は、この領域の基礎課題の一つである「伝送」の技術開拓に資するものである。超伝導伝送路は、平面回路や同軸ケーブルは既に市販されているが、導波管回路は実用例が無く、本研究の成果はテラヘルツ帯導波管コンポーネントの実現における重要な足掛かりとなる。
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