研究課題/領域番号 |
20K21027
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
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研究機関 | 北海学園大学 (2022) 石川工業高等専門学校 (2020-2021) |
研究代表者 |
鈴木 洋之 北海学園大学, 工学部, 教授 (70342491)
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研究分担者 |
鈴木 伸洋 上智大学, 理工学部, 准教授 (50735925)
志垣 俊介 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (50825289)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 洪水ストレス / 冠水ストレス / 病害応答 / 活性酸素 / サリチル酸 / ジャスモン酸 / 植物型センサロイド / 洪水 / 植物ストレス / 河川流 / 植物ストレス応答 / 制御理論 |
研究開始時の研究の概要 |
植物は外力刺激に応じて生物学的に様々なストレス応答を示す.本研究では流水刺激を受けて河道内の植物に生じたストレス応答から,この植物が受けた洪水の水理情報を抽出するという前例のない生物学的原理に基づく計測技術(植物型センサロイド)を確立する.本研究では設定した洪水流による刺激を植物サンプルに与える負荷実験を行うと共に,流れのもつ各水理量を計測・推定する.このように負荷を与えた植物サンプルに生じる応答を生育的・生理学的・分子生物学的に解析して,洪水流が起こしたストレス応答を捉える.さらに,これら生物学的諸量を出力とし,各種水理量を入力とした植物システムを制御理論でモデル化する.
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研究実績の概要 |
冠水ストレスおよび流れのある洪水ストレス(以降、洪水ストレス)に対するシロイヌナズナの応答を比較するために、前年度までにRNA-Seqによるトランスクリプトーム解析を行っていた。2023年度はそのデータを詳細に解析すると同時に、結果を確認するためのqRT-PCR解析を行った。冠水ストレスには応答しないものの、洪水ストレスに対し有意に発現が上昇する遺伝子群には、病害応答並びにサリチル酸およびジャスモン酸シグナルの制御に関与するものが多く含まれていた。また、病害応答に関与する遺伝子が多かったことから、活性酸素生成酵素をコードする遺伝子についても調査したところ、RbohC並びに病害応答に関与することがすでにわかっているRbohDおよびRbohF遺伝子の発現が、洪水ストレスに応答して著しく上昇することがわかった。これらの結果から、植物が活性酸素、サリチル酸およびジャスモン酸応答が関与する病害応答機構を介して洪水ストレスに対し応答していることが示された。また、この応答は冠水ストレスでは活性化されないものの、洪水ストレス条件下で特異的に活性化されるメカニズムである可能も示された。さらに、前年度までに洪水ストレスがシロイヌナズナのロゼットの直径に影響を与えることを明らかにしていたが、2022年度にトランスクリプトームの結果と合わせて再度解析したところ、上述したRboh遺伝子がロゼットの直径を決める重要な因子である可能性も示された。これらの結果は2023年6月に行われる国際学会で発表する予定である。なお、この発表は注目される研究としてShort Talk(口頭発表)に選ばれている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度には冠水ストレス負荷実験と洪水ストレス負荷実験を実施してきた.ここでは主にサンプルの成長過程の変化の違いを捉えることを中心に進めてきた.また,2021年度には生物学的解析として遺伝子の網羅解析により流れによって活性化する遺伝子の大枠が推定できた.この2年間は本課題の遂行メンバーが所属する石川県・東京都・大阪府においてコロナ禍の影響が特に大きかったこともあり,本課題の進行が予定より遅れたものとなったが,2022年度の成果により,本研究の目的である洪水流に対する植物型センサロイドの開発に必要な植物の生物学的特性の一部を明らかにできたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響を受けてやや遅れていた本課題も当初予定に軌道修正ができた.本年は当初計画に従った成果公表を進めることとする.流れの持つ水理量の計測に植物を使用するには流れの持つ水理量の大きさに比例して発現する(いわゆる直線性)応答を見出せると望ましい。しかしながら,数多くある植物の応答機構の中から,この条件を満たす応答を実験を重ねて見出すことは難しい.センサーとしての利用を念頭に置いた流れのストレスに対する応答のモデル化とともに植物の流れに対する応答機構の理解を深めることが必要である.昨年度まで進めてきた応答機構の整理を含めて成果の公表を本年度進める予定である.
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