研究課題/領域番号 |
20K21122
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
柴田 幹大 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (80631027)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | バイオイメージング / 原子間力顕微鏡 / 記憶・学習 / タンパク質 / 脳機能 |
研究開始時の研究の概要 |
脳神経科学のこれまでの膨大な研究から、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)は、神経細胞内に存在する記憶分子と推定され、あらゆる研究手法によりその詳細が調べられてきた。CaMKIIは巨大な12量体を形成し、高頻度のCa2+信号を積算する能力を持つため、多量体の形成が信号積算能力と密接に関わると考えられてきたが、それを実証する手法がなかった。本研究は、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を駆使し、12量体中の個々のCaMKIIの活性化状態をリアルタイムで直接可視化することで、記憶タンパク質CaMKIIがどのような分子メカニズムで信号を積算できるのかを明らかにする。
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研究成果の概要 |
脳機能における記憶形成機構を分子レベルで理解することを目指し、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)をカルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)に適用し、その活性化状態を1分子レベルで可視化した。その結果、12量体を形成するCaMKIIは、中心にあるハブドメインが安定な構造をとる一方、周囲のキナーゼドメインはその周りを自由に動き回ることが分かった。さらに、Ca2+/CaMの結合とATPによるリン酸化状態では、キナーゼドメインはハブドメインから遠く離れ、より自由に動くサブユニットが出現することが分かった。これらの結果から、CaMKIIの信号積算メカニズムを提唱した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
現代では、医療の大幅な発展により、ヒトの生物としての寿命が大幅に延びる一方、脳の機能障害による病気や精神疾患には、未だに有効な治療法が確立されていない。記憶を分子(タンパク質)レベルで明らかにし、その詳細な分子作動メカニズムを解明することは、人として幸福に人生を全うすることを助長し、人類の健康の増進に大きく寄与するに違いない。本研究は、記憶タンパク質ともいわれるCaMKIIの信号積算メカニズムの一端を高速AFMの1分子イメージングにより明らかにした。この研究成果は、脳内の神経細胞に形成される記憶をタンパク質1分子の構造変化やナノ動態で説明がつく可能性を示し、学術的意義が高いと考える。
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