研究課題
挑戦的研究(萌芽)
植物が自然環境でしばしば遭遇する窒素欠乏を、どのように感知し応答するのかについて、その分子メカニズムの理解は進んでいない。本申請研究では、C4単子葉植物であるエノコログサ(Setaria viridis)を新たな順遺伝学的研究材料として用いて、その分子メカニズム解明に挑戦する。エノコログサは、窒素栄養環境に対する高い適応能力や低窒素環境における高い競合能をもち、実験室レベルで遺伝学的材料として扱いやすい特徴をすべて備えている。具体的には順遺伝学的解析(変異体、GWAS)を行うためのパイプラインを一から構築し、窒素欠乏応答を指標に解析を行うことで、窒素欠乏感知・応答メカニズム解明を目指す。
自然環境でしばしば遭遇する窒素欠乏を、植物がどのように感知し応答するのかについて、その分子メカニズムの理解は進んでいない。その原因として、シロイヌナズナを用いた順遺伝学的アプローチが限界に近づいていることが挙げられる。そこで本研究では、C4単子葉植物であるエノコログサを、新たな順遺伝学的研究材料として開発することで、この問題解決に挑戦した。エノコログサA10.1系統のゲノム配列の高精度解読、598種のエコタイプのゲノム配列解析、変異体ライブラリーの作製、幼植物および成熟植物に窒素欠乏を引き起こさせる栽培条件の決定、窒素欠乏に対する生理的応答の基礎データ収集などを行ない、研究基盤の整備を進めた。
本研究がさらに進展し、多くの研究者がエノコログサを順遺伝学的研究に容易に利用できるようになれば、窒素欠乏感知・応答機構を含め植物に普遍的な生命現象についての理解だけでなく、C4植物に特徴的な生命現象の研究の方向性にも大きな変革をもたらすであろう。特筆すべきは、エノコログサが、トウモロコシなど、その大きさゆえに遺伝学的研究には様々な困難が伴う作物と同じC4植物であることである。エノコログサを用いれば、これまでは不可能だった実験系も可能となり、C4 光合成成立の仕組み、C4 植物に特徴的な高い窒素利用効率や乾燥耐性を支えるメカニズム、C4草本雑草防除の研究にも大きな波及効果が期待できる。
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