研究課題
挑戦的研究(萌芽)
植物は器官・組織ごとに異なる環境情報を受容している。しかし、植物がどのようにして時間情報が個体レベルで統合されているかは、ほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、概日周期の不安定性というこれまで着目されてこなかった新しいパラメーターを指標に、申請者が見出しつつある維管束を介したカリウムと糖の栄養シグナル伝達こそが植物の地上部と根をつなぐ時間情報の相互伝達の本質であることを明らかにする。これにより、植物が時間情報を伝達・共有する仕組みを解明すると共に、こうした仕組みが実際に植物の適応度を向上させることを証明する。
時間情報は近距離および長距離に伝達されており、これが概日リズムの安定化に関わっていると考えられている。器官レベルでは地上部から根への時間情報伝達は示されていたものの、根から地上部への時間情報伝達の有無は不明であり、また、これらが概日リズムの安定化にどう関わっているかも不明であった。本研究では、根における時計遺伝子PRR7はカリウムの吸収リズムを制御した。さらに、カリウム欠乏培地中で生育させると、地上部の概日リズムの周期が不安定化した。この現象は、接ぎ木によって根だけをprr7にした植物を通常培地で生育した場合でも観察され、変地上部の概日リズムの安定化に関わっていることを明らかにした。
フィードバックループによって概日リズムは安定化していると考えられており、これを遺伝子間、オルガネラ間、細胞間と階層化することでより安定なリズムが形成されていると考えられる。本研究ではこれまでに報告されている地上部→根に加えて、根→地上部の長距離シグナル伝達経路を明らかにしたことで、植物でもっとも大きいレベルである器官間でのフィードバックループを強く示唆する結果を得た。根の概日時計が栄養シグナルを介して地上部の概日リズムを制御することから、植物工場における水耕栽培などにおいては施肥のタイミングも収量や品質に影響しうることを示唆し、新たな制御ターゲットになると期待される。
すべて 2023 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Plant and Cell Physiology
巻: 64 号: 3 ページ: 352-362
10.1093/pcp/pcad003
巻: - 号: 5 ページ: 649-657
10.1093/pcp/pcac027
Journal of the American Chemical Society
巻: 144 号: 4 ページ: 1572-1579
10.1021/jacs.1c09844
Plant Physiology
巻: -
Science Advances
巻: 7 号: 18 ページ: 1-12
10.1126/sciadv.abe8132
Science Advance