研究課題/領域番号 |
20K21931
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 聖子 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 助教 (80754259)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 文化資源学 / ドキュメンタリー / 無形文化財 / 文化財保護 / 環世界 / 伝統芸能 / レコード / 聴覚文化 / ドキュメンタリー・レコード / 記憶 / 記録 / 伝承 / 保存 / 小沢昭一 / 古代 / 語り / 音声 / 芸能 / 放浪芸 / 雅楽 / 正統性 / 日本音楽 / 価値づけ / 録音 / 社会運動 |
研究開始時の研究の概要 |
現行の無形文化財保護制度は、音楽芸能の指定の際に正統な「わざ」の担い手を認定するため、その認定から外れた担い手に配慮が行われにくいという問題がある。申請者はこれまで、こうした保護制度の正統性の概念に影響を与えた、20世紀前半の日本音楽研究の知の形成過程を明らかにしてきた。 本研究では座標軸を戦後に置き、こうした保護制度に異を唱えた小沢昭一のLPレコード集『ドキュメント 日本の放浪芸』(1971-1977)を分析する。約90種にのぼる稀少な音楽芸能を収集したこのLP作品における音楽芸能の正統性の概念を明らかにすることで、当時の保護制度の受容・限界・可能性を理解し、今後の保護制度の在り方を再考する。
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研究成果の概要 |
1970年代、俳優の小沢昭一は、ビクターのディレクター市川捷護の依頼でLP『ドキュメント 日本の放浪芸』を制作した。当時多くの音楽学者から無視されていた放浪の芸能者を録音して収録した。日本演劇史の河竹繁俊は、天岩戸の前でエロティックな踊りを披露した天宇受売を日本最初のストリップ俳優と位置付けた。この解釈は、戦前の皇室思想からの解放を意味するだけでなく、ストリップの正統性を示すものであった。河竹の弟子である郡司正勝は「放浪の芸能」という類型を提示した。本研究は、小沢がこれらの前衛的な視点を取り込み、俳優としてのアイデンティティを探求するドキュメンタリー・レコードを実現したプロセスを明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、1970年代に無形文化財保護の在り方を批判した小沢昭一のLP『ドキュメント 日本の放浪芸』に関する資料を収集し、制作関係者への聞き取り調査を行い、同時代の聴覚メディア作品(ラジオ劇・実録レコード・朗読等)と比較検討しながら、この作品の誕生した文脈とそこに具現化された小沢の音楽芸能の正統性の概念を明らかにした。これまで『日本の放浪芸』のみならず、小沢を対象とするまとまった研究も行われてこなかった。とりわけ多くの愛好者を持つ彼の聴覚メディア作品に着目し、また「伝統音楽」「伝統芸能」「民俗芸能」の枠では扱いにくい作品を考察の俎上にのせた点で、小沢研究を開拓するものとして学術的創造性をもつ。
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