研究課題/領域番号 |
20K21978
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
野口 尚志 香川高等専門学校, 一般教育科(高松キャンパス), 講師 (70882520)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 太宰治 / アジア・太平洋戦争 / 言論統制 / 文学者と社会 / 思想戦 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、戦時下の文学に目を向け、言論統制を主とする社会的な圧力と文学との関係を、〈新たな表現方法の創出〉という視点から明らかにしようとするものである。 作家が言論統制下で作品を書くとき、その不自由さに抗するためにどのような表現方法を開発していったのか。この視点から作品を読解することで、〈新たな表現方法の創出〉の側面を見出すことが可能になる。本研究では、戦時下でも一定数の作品を発表し続けた太宰治の作品を軸に、言論統制を潜り抜ける方法論と、そうした作品を通じてどのようなメッセージを発しようとしていたのかを検討していく。
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研究成果の概要 |
太宰治の中期作品の特徴として、動物の比喩と女性の一人称の語りを挙げることができる。これは前期にはほとんど見られず、中期に増加する。本研究は言論統制と文学表現の関係を追究しようとしたものだが、その過程で、検閲による処分を避けつつ、戦時体制からの疎外を表現するために、動物と女性が作品の中で用いられている可能性が浮上してきた。動物と女性を用いることによって、戦時体制の中でもとりわけ徴兵制がつくり出す疎外の問題を語っていたのが中期の太宰作品だったのではないかと考えられる。こうした戦争への単純な賛否とはことなる作品読解の視点を追究した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
戦時下の文学作品は戦争への賛否以外にどのような視点で読むことができるのか、そのことを考えるために言論統制が生み出す文学表現について追及した。太宰治の作品からは、戦時体制からの疎外を語る作品の様相を見てとることができる。これには戦争への批判の側面と、戦時体制への協力を兵士とは異なる形で行いたいという願望の表れの面とがある。この両極が同時に存在する視点は学界に提示する意義のあるものと考える。また、こうした作品を戦時下で発表する作家の行動からは、国家体制と国民との関係についての問いかけを得ることができるだろう。
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