研究課題/領域番号 |
20K22169
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0108:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 東洋英和女学院大学 |
研究代表者 |
野田 潤 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 講師 (60880755)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 家族 / 愛情 / 家事 / 食 / 弁当 / 一汁三菜 / 親密性 / 性別役割分業 / 愛妻弁当 / 近代日本 / 現代日本 |
研究開始時の研究の概要 |
現代の日本では、「妻による手間をかけた手作り料理は、家族への愛情の証明である」という考え方が広く見られる。こうした意識は、共働きが一般化した現代においても家族の食事作りを負担するのがほぼ妻であるという日本社会の現状を下支えしていると考えられる。そこで本研究は「近現代日本で家族の食と愛情を強く関連付ける解釈枠組が一般の人々の間でいつ頃どのように成立・一般化し、現代に至るまでどう変容してきたか」を、過去100年分の新聞や雑誌記事にもとづいて検証する。これにより、日本ならではの家族の近代性を明らかにするとともに、手作り料理にまつわる家族愛の規範と家庭内の性別役割分業の関連について解明する。
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研究成果の概要 |
本研究は「妻は家族のため手間をかけた食事を手作りするべき」という近現代日本の規範の由来を検証した。まず1874~2020年の読売新聞から「腰弁」「愛妻弁当」「愛情弁当」を見出しに含む記事を分析すると、「手作り弁当=愛情の証」という強い意味付けは1960年代半ば~1970年頃に成立し、現代まで続いていることが示された。次に1915~2020年の読売新聞の献立・レシピ記事の分析からは、家族の日常食に求められる水準が1970年代から急上昇し、1980年代末~1990年代初頭にかけて最大化したことが示された。そして現代の日本では時短や省力化の必要を説く言説と「手間=愛情」と語る言説の併存が見られた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の分析からは、近代日本社会において妻の手作り料理に対する社会的な要求水準が急上昇するプロセスとは、「既婚女性の手作り料理=家族に対する愛情の証」という考え方が日本社会に定着するプロセスと一体だったことが明らかになった。ここからは近代家族における愛情規範が性別役割分業の論理を正当化し、家事の要求水準を上昇させていくメカニズムが、実証的に示されたといえる。また現代日本でも母の手作り料理は「愛情の証」として重視されるが、本研究の知見からは、これが既婚女性の家事時間の軽減を中途半端なものにさせつづけ、共働きの既婚女性の負担感や職業上のジェンダー格差を増大させる一因となっている可能性も示唆された。
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