研究課題/領域番号 |
20K22195
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
工藤 瞳 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 助教 (30880257)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | チリ / 高等教育 / 無償化 / 格差是正 / 教育政策 / 教育バウチャー制度 / 高等教育無償化 / 学校選択 / school segregation / 学校包摂法 / バウチャー制度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、南米チリの教育機会格差是正策の形成背景と影響を検討する。チリでは、規制緩和や学校間競争推進を軸とした新自由主義的教育政策の影響で、家庭の所得や保護者の学歴など社会経済水準による教育格差・学校の棲み分けが深刻化した。本研究では、中等教育以下での入学者選抜禁止を含む学校包摂法(2015年)、高等教育無償化政策(2016年)といった政策により、格差が是正されうるのかを考察する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、南米チリにおける教育機会の格差が政策によって是正されうるのかを明らかにすることである。特に、2015年に制定された学校包摂法と2016年に導入された高等教育無償化政策に着目している。 2023年度はチリの高等教育無償化政策の実施状況と課題について検討し、日本国際教育学会紀要『国際教育』において発表した。また、チリの高等教育無償化政策と日本の高等教育修学支援新制度の比較も行い、2件の学会発表を行った。 チリと日本の高等教育費用負担軽減策比較に関しては以下の成果が得られた。両国ともOECD加盟国で高等教育機関に占める私立機関の割合や高等教育における私費負担の割合が高く、部分的な費用負担軽減策を導入している。チリは対象者が広く設定されている一方で、対象外の機関の割合が高い。日本は対象者が限定されているが、対象機関の割合は高い。両国とも構造的な社会問題(チリは教育機会の不平等、日本は少子化)への対策として、高等教育費用負担軽減策を導入している。しかしその目的に照らし合わせると、両国とも効果が曖昧である点を指摘した。 また、2023年9月にチリでの調査を実施し、高等教育無償化政策に関してはチリ・カトリカ大学の研究者と意見交換を行った。中等教育以下を対象とした学校包摂法の影響に関しても、研究者にインタビューを行うとともに、複数の学校を訪問し、教員へのインタビューを実施した。その結果、学校包摂法下で導入された入学調整制度(SAE)は、導入背景であった学校間における生徒の社会経済的な棲み分けには影響していないという声が聞かれた。一方で、特別な教育的ニーズを持つ生徒が事前の調整なく入学するため、対応に苦慮するようになった、といった声が聞かれた。学校包摂法の影響に関してはさらに調査を進め、2024年度中に研究成果を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学校包摂法、高等教育無償化政策とも、文献調査により実施状況と課題を把握し、それぞれ研究成果を公表することができた。一方で、当初2回予定していた現地調査を2023年度の1回しか実施できず、調査が予備的な段階にとどまった。ただし、2023年度の調査では、新たな知見も得られた。具体的には、学校包摂法下で導入された入学調整制度(SAE)について、従来注目していた社会経済的な格差解消の観点だけでなく、特別な教育ニーズを持つ子どもの入学など、より広い観点でその影響を考察する必要があることがわかってきた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度中に本研究課題の2回目の現地調査を実施し、特に学校包摂法下で導入された入学調整制度の影響を明らかにする。2023年度の調査では、調査対象校・対象者が限られていたため、2024年度は教育省や自治体の教育担当部署、2023年度に関係者と連絡が取れたものの訪問できなかった学校を訪問する。得られた研究成果は学会で発表するとともに、論文にまとめる。 加えて、2023年度に口頭発表を行った日本とチリの高等教育費用負担軽減策比較に関しても論文を執筆する。
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