研究課題/領域番号 |
20K22450
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0304:建築学およびその関連分野
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研究機関 | 東北工業大学 (2022) 関東学院大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
栗原 広佑 東北工業大学, ライフデザイン学部, 講師 (60883874)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 地域型木造住宅 / 薪ストーブ / 室内温熱環境 / 森林資源 / 冬季の住まい方 / 建材利用 / 燃料利用 / 地産地消 |
研究開始時の研究の概要 |
低炭素社会の形成を目指す上で、カーボンニュートラルな森林資源の循環的利用は意義が深い。本研究では、森林資源の建材としての地産地消に基づいた山形県金山町の地域型木造住宅を調査対象として、森林資源の燃料としての地産地消に基づいた薪ストーブ使用時に形成される室内温熱環境の実測調査を行う。本研究は、主に冬季を中心とした地域型木造住宅における熱的快適性の実態把握と評価から、今後の低炭素社会の形成に寄与する木造住宅のモデル構築に向けた知見を得る事を最終的な目的としている。
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研究実績の概要 |
山形県金山町における家屋形態が異なる複数の地域型木造住宅を対象として、薪ストーブ使用時に形成される室内温熱環境の実測調査を行った。対象地域において薪ストーブを使用している地域型木造住宅71戸のうち、家屋形態が異なる8戸と、比較対象として薪ストーブを使用していない住宅1戸を調査対象として選定した。薪ストーブが設置されている室を暖房室とし、床上高さ1.1mに熱中症指数モニター(AND, AD-5695DL)を設置し5分間隔で気温・相対湿度・グローブ温度を測定した。暖房室に隣接する室を隣接室と、暖房室の上部の室を上階室とし、それぞれの床上高さ1.1mに温度データロガー(AND, AD-5326TT)を設置し5分間隔で気温を測定した。測定は2023年2月10日から2月27日にかけて計18日間行った。また、年間の薪使用量や住宅内の暖房範囲、冬季と夏季の住まい方の違いなどについてヒアリング調査を行った。 薪ストーブを終日使用していた代表日の結果に着目すると、断熱・気密性が高く相対的に規模が小さい住宅にはより高温な室内温熱環境が形成され、暖房室に開放されている隣接・上階室にも充分に熱が伝達している事が明らかになった。 また、夜間を通して概ね20℃前後を下回らない良好な室内温熱環境が形成されている。断熱・気密性が低く相対的に規模が大きい住宅では、暖房室には概ね良好な室内温熱環境が形成されるものの、隣接・上階室には充分に熱が伝達せず、暖房時間の熱は薪ストーブへの燃料投入を中止した後から翌朝までにほとんど解消されていた。 以上から、薪ストーブ使用時に形成される室内温熱環境は住宅の仕様により大きく異なり、断熱性が高く住宅全体の面積・気積が相対的に小規模である住宅では、隣接室・上階室を含め高温かつ、翌日の予熱開始時刻にも気温が低下しない良好な室内温熱環境が形成される事が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況から現地調査を見送らざるを得なかったが、今年度は比較的状況が落ち着いていたことから現地調査を実施できた。当初の研究計画通り、町役場との協力体制を構築し、調査対象候補への調査協力依頼を順調に進めることができた。当初の予定通りに家屋形態の特徴の異なる8戸の住宅と、比較対象として薪ストーブを使用していない1戸、計9戸の世帯からの調査協力を得られた。今年度は平年と比べやや温暖な気象条件であったものの、厳冬期に約3週間の室内温熱環境の実測調査を実施した。また、住宅の設計図や仕様に関する基礎情報や、薪ストーブの使用方法等に関する住民へのヒアリング調査も概ね満足に実施できた。以上から、今年度に測定するべきデータは充分に取得できたものと考えている。一方で、今回対象とした住宅は建築年や仕様が様々であるため、例えば断熱材の仕様の把握が困難である場合も少なくなかった。これらに関しては次年度の追加調査にてデータを補う計画である。 今回の調査結果からは比較的小規模かつ断熱・気密性の高い住宅において暖房室と隣接・上階室を含めた一体的な暖房が可能である点を明らかにした。一方で、それ以外の住宅でも暖房室には基本的には平均気温が18℃以上となる室内温熱環境が形成されており、アンケート調査からは住民もこの室内温熱環境に概ね満足している。対象とした住宅は仕様のほかにも世帯構成が様々であり、それぞれの世帯構成に応じた住まい方を選択しているものと見られる。冬季に住宅内が均一に暖房されている事は言うまでもなく住まい手にとって快適であるが、省エネルギーという観点からは冬季に使用する室・範囲を限定してコンパクトに住まう方策も有効であると考えられる。住宅の間取りや熱的性能、暖房機器そのものの性能のみならず、季節変動に応じた住まい方に関する追加調査については今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、次年度も冬季の室内温熱環境の実測調査を実施し、データの拡充を図る予定である。また、関係機関との相談の上、今年度に対象とした住宅以外も調査対象とすることを検討している。今年度の調査からは、冬季だけではなく夏季の室内温熱環境についても調査を実施する必要性が示唆された。今年度は暖房室・隣接室・上階室の一体的な空間構成と薪ストーブによる暖房との相性が良好である点が明らかになった。住民へのヒアリング調査によると、この空間構成は夏季にも有効であり、エアコン等の冷房設備を使用せず自然通風のみで充分に快適な室内温熱環境となっているとの証言もあった。つまり、当該調査対象地域においては、冬季の薪ストーブによる効率的な暖房と、夏季には機械設備に頼らず過ごせる住宅の在り方は矛盾しないという可能性が考えられる。以上を立証する事ができれば、冷暖房用の消費エネルギーのほとんどを化石燃料に依存せず生活できる住宅の在り方を示せる事となり、森林資源に恵まれた日本の農山村地域におけるゼロ・エネルギー・ハウスの一例となる事が期待できる。このことから夏季の室内温熱環境調査も実施する予定である。 当該対象地域では町役場を中心として次世代の地域型木造住宅の在り方に関する検討を進めている。本研究で得られた室内温熱環境に関するデータは順次提供し、引き続き関係機関との協力体制を維持しながら研究を推進していく計画である。
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