研究課題/領域番号 |
20K22745
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0802:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
坂入 伯駿 順天堂大学, 医学部, 助教 (20876693)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 異種GPCR間相互作用 / 運動学習 / LTD(長期抑圧) / 1型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1) / GABA-B受容体(GBR) / GAGA-B受容体(GBR) |
研究開始時の研究の概要 |
小脳運動学習における神経細胞レベルの基礎であるプルキンエ細胞の長期抑圧(LTD)は、1型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)活性化により生じる。mGluR1が発現するシナプスにGABA-B受容体(GBR)が共発現してLTDを増強すると分かっているが、機序は未解明である。申請者はmGluR1とGBR間の結合、また両受容体の細胞内シグナルの双方向調節を発見し、更に受容体間の結合と受容体機能が連動して変化する可能性を見出している。これを踏まえ、mGluR1とGBR間の結合状態変化によるmGluR1細胞内シグナル伝達の調節、及びそれによるmGluR1依存性LTDの増強機構解明を本研究の目的とする。
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研究実績の概要 |
運動の反復によって動きの滑らかさや正確性が獲得される学習過程を運動学習と呼ぶ。運動学習は主に小脳がその機能を担っており、小脳疾患における運動や発話の障害にも関わる重要な機能である。小脳運動学習が生じる仕組みは、プルキンエ細胞のシナプス上に発現する1型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)の活性化、及びそれを起点として生じる長期抑圧(LTD)という現象により説明される。近年の研究で、GABA-B受容体(GBR)がmGluR1と同じシナプス上に発現してLTDを増強する現象が発見されたが、その機序は未解明であった。申請者はmGluR1とGBRが結合すること、また両受容体が双方向にシグナルを調節することを発見し、さらに受容体間の結合状態とシグナル調節とが連動して生じる可能性を見出した。これらの発見を踏まえ、本研究ではmGluR1とGBRの結合状態変化の観点からLTD増強の機序解明を目指している。本年度は前年度に明らかになった課題を踏まえて、GBR恒常発現HEK細胞を新たに樹立し、更にこれを基にGBR恒常発現mGluR1誘導発現HEK細胞を樹立した。これによって、受容体間の結合やシグナル調節についてこれまで困難であった実験手法を適用できるようになり、現在技術導入を進め、既に新たな知見を得つつある。これにより、今まで十分な解析が難しかった両受容体の結合とシグナル調節の因果関係が明らかになると期待され、GBRの活性化によるmGluR1のシグナル増強について受容体分子レベルでのメカニズム解明につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究によって、mGluR1とGBRの結合を明確に評価するためには、新たに恒常発現・誘導発現モデル細胞株の作成が必要と判断した。そのため、本年度は主にHEK細胞を用いたGPCR発現系の樹立とそれを用いた解析に取り組んだ。まずGBR恒常発現HEK細胞を樹立し、さらにその細胞を基にmGluR1を誘導発現する細胞を作成して、GBRを恒常的に発現させながらmGluR1の発現量を外的にコントロールできる系を確立した。また、前年までの研究でmGluR1のネガティブコントロールとなり得るGPCRを発見したため、mGluR1の代わりにこのGPCRを誘導発現する細胞も作成してより明確な対照実験を可能とした。この細胞株を用いて、mGluR1の発現量とGBR活性の関係や、両受容体の位置関係等についてこれまで困難だったアプローチを行うことが可能になり、新たな知見が得られている。一方、昨年度より引き続くCOVID-19や社会情勢不安によって研究に必要な試薬やプラスチック器具の生産・流通が滞り、特に初代培養プルキンエ細胞培養系の導入に遅れが生じている。代わりに、当研究室で確立しているラット海馬初代培養系を用いて解析を進め、小脳以外の神経細胞における両GPCRの局在について知見を得るとともに、プルキンエ細胞培養系にスムーズに応用するための準備を行っている。総じて、モデル細胞における解析は当初の計画以上に進展し、神経細胞での解析については昨年度の遅れを取り戻しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
新たに確立したHEK細胞株を用いて、リガンド結合や1分子イメージングなど新たなアプローチを取り入れて受容体の結合とシグナル調節の関係を明らかにする。結合形成への介入方法を開発し、初代培養神経細胞への導入を行う。幸い物流は徐々に回復しつつあり、プルキンエ細胞を用いた系の導入も当初の計画通り可能となると考える。
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