研究課題
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小脳運動学習における神経細胞レベルの基礎であるプルキンエ細胞の長期抑圧(LTD)は、1型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)活性化により生じる。mGluR1が発現するシナプスにGABA-B受容体(GBR)が共発現してLTDを増強すると分かっているが、機序は未解明である。申請者はmGluR1とGBR間の結合、また両受容体の細胞内シグナルの双方向調節を発見し、更に受容体間の結合と受容体機能が連動して変化する可能性を見出している。これを踏まえ、mGluR1とGBR間の結合状態変化によるmGluR1細胞内シグナル伝達の調節、及びそれによるmGluR1依存性LTDの増強機構解明を本研究の目的とする。
本研究は、小脳運動学習が生じる仕組みのひとつである1型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)の活性化、及びそれを起点として生じるプルキンエ細胞の長期抑圧(LTD)という現象について、mGluR1が発現するシナプスにGABA-B受容体(GBR)が共発現してLTDを増強する現象を踏まえて、mGluR1とGBRの結合状態変化の視点からLTD増強機序の解明を目指したものである。mGluRとGBRを共発現するHEK293細胞、及び初代培養神経細胞を用いた解析の結果、mGluR1の発現量とGBRシグナルの関連を見出し、またGBRとの結合能がmGluR1と大きく異なるmGluRサブタイプを発見した。
運動学習とは運動の反復によって動きの滑らかさや正確性が獲得される学習過程のことであり、小脳疾患における運動や発話の障害にも関与する重要な機能である。mGluR1はその学習の成立に重要な役割を持つ受容体である。本研究は、そのような重要な役割を持つmGluR1が他のGタンパク質共役型受容体(GPCR)と結合することで相互に機能調節を行う可能性を示すものであり、運動学習やその異常に関して新たな視点を与える学術的意義を持つ。GPCRの相互作用は新たな創薬ターゲットとしても注目されており、本研究もまたmGluR1とGBRの結合と相互作用に基づく運動学習の病態理解や治療戦略を考える上で社会的な意義を持つ。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
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