研究課題/領域番号 |
20KK0062
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田辺 博士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30726013)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2020年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | プラズマ・核融合 / 球状トカマク / 磁気リコネクション / コンピュータトモグラフィ / 加速・加熱・輸送 / 核融合 / プラズマ診断 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、これまでの世界最大の球状トカマク合体生成実験MASTを超える新実験として注目される、英国トカマクエナジーST40との日英国際共同実験を実施し、超高磁場リコネクションにおける巨大加熱・輸送過程の解明およびその最適化、定常運転連結シナリオの開拓を推進する。現地実験直接参加のための派遣に加え、本研究では東京大学が得意とするイオンドップラートモグラフィによる、合体・リコネクションの加熱・輸送過程のイメージング計測を持ち込む実務協力を交えて研究を遂行する。
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研究実績の概要 |
コロナ禍に伴う渡航自粛制限の緩和・撤廃の流れとともに、2022年度は徐々に現地派遣を伴う実務協力部分の強化の1年となった。トカマクエナジーST40実験における、合体生成シナリオのイオン加熱最大化のための2次元イオンドップラートモグラフィ計測の現地建設、NBI等を組み合わせた点火領域の1億度の達成、準定常運転の確立の3つを主課題とする本研究課題について、後者2つはコロナ禍の自粛渡航制限期間中も着実に進展し、合体生成球状トカマクの準定常運転の確立に続いてNBIを用いた追加熱で2022年に1億度が達成されたことは世界的なニュースとなり、広く知られるところである。前者の2次元ドップラートモグラフィ計測の現地建設については、コロナ禍に伴う長期渡航制限の影響もあり遅れが見られていたが、2022年度より徐々に現地渡航が再開。2次元計測用大口径ポート割り当てが実現、現在実システムの建設が開始されたところであり、本研究計画の現地実務協力の本体ともいえる研究がようやく本格的に開始した。 8つのポート構成でありながらNBI3系統を有するST40装置は、対向面3面のポートがビームダンプで視野が制約される状況のため、計測で広範囲の視野を取れるポートは2面に限られ、これまでは2次元計測に使用可能なポート割り当てがなされないことで、共同研究は1次元ドップラートモグラフィ建設にとどまってきた。しかしながら2022年の渡航再開に伴い、ST40のポート活用の死角として、現地研究者が気がつかなかったトムソン散乱の集光窓横の空隙を利用したポート共用案を提案したところ、現地計測チーム代表から高い評価を受けて採択となり、これまでの共同研究史上最大の視野範囲を獲得可能なポートk獲得に成功した。ファイバー素線現地持ち込み、ファイバーバンドル現地加工を経て96CH2次元ドップラートモグラフィ現地建設が始動。2023年度の完成、物理実験開始に向け、準備を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年~2022年度までのコロナ禍の影響による計画延長申請は必要となったものの、自粛要請緩和および2023年度の制限撤廃に伴い、現在順次派遣を再開しているところである。2022年度11月より現地派遣を伴う実務協力が再開し、2022年度は以下の協力が進行した: > 2022年11月:イオンドップラートモグラフィ計測のポート移動に伴う計測系再設置に伴うプロポーザル再提出、承認 > 2023年2月:1次元計測系復旧準備のための現地計測室利用許可獲得、1次元計測用分光システム復旧完了、2次元計測新規構築の承認、集光システム用光ファイバの現地加工開始 当初はコロナ禍の派遣自粛期間の間に一度ST40装置から取り外されていた1次元ドップラートモグラフィ計測の復旧などの簡易的な復旧となることを想定していたが、現地派遣を伴う共同研究復旧が徐々に軌道に乗り始めるとともに、現地側からも大幅な譲歩が得られ、以前利用していた装置真空窓よりも大きなポートを利用することが可能となった。現地トムソン散乱が利用する大窓の側面に存在する空隙を利用するという条件付きではあるため、専有面積を極小化した極限設計が必要ではあるものの、本研究計画で当初から想定していた2次元ドップラートモグラフィ応用において過去最高の走査範囲を実現可能な窓が割り当てとなったことから、今後本研究は大幅に進展することが期待される。2022年度は東大から96CHトリプルスリット型分光計測用の光ファイババンドル現地持ち込みが行われ、これに接続される前長12mの集光用光ファイバは48CHが現地生産が完了し、残り48CHは2023年度に素線追加納品の後に追加投入される予定である。 コロナ禍に伴う共同研究停止期間を差し引いて評価すれば、研究計画当初想定していた二次元ドップラートモグラフィの建設も順調に開始されたことから、2022年度評価は「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
現地派遣再開に伴い、2023年度はトカマクエナジーST40実験の現地における2次元イオンドップラー計測システムの完成、それを応用した物理実験の推進を行う予定である。現在48CH分の光ファイバ現地持ち込みは完了しており、16CHx3バンドルの加工が完了。石英製素線の追加購入を進めているところであり、2023年度夏頃に、残り48CHの追加調達が完了する予定である。 最終的には96CHの石英製光ファイバを用いて2次元96CH(16x6)計測を構築する予定であり、石英製光ファイバの調達が完了する夏までは、簡易的にプラスチックファイバ48本を併用することで、石英ファイバの高感度48CHと、伝送効率は劣る48CHを組み合わせて初期計測を開始、石英素線の調達完了に伴い96CHすべて石英製の光ファイバに置換し、高スループット・高精細二次元計測を開始する予定である。2019~2020年の建設当初はテスト実験ということもあり全てプラスチックファイバによる計測で伝送効率ロスで感度が劣る制限の中での実験であったが、同制約が改善されたより良い実験条件で、さらに計測系も2次元計測にアップグレードした上で共同実験を推進する。 計測に用いる検出器は、最初は東大から持ち込んだICCDを利用予定であるが、現地研究所保有のEMCCD活用の可能性が出てきたため、同カメラに必要な高速シャッターの選定を進めているところである。年度前半はICCDカメラのfast kinetics mode等を活用してチャンネル数を限定した高速撮像モードで運転を開始するが、高速シャッター調達が順調に進んだ場合は検出器のEMCCDへの更新を実施する。 ST40実験のオペレーションに関しては、現在ST40の合体実験を駆動する「MCコイル」の放電波形の修正可否の試験を進めているところであり、MCコイルからのdetachment最適化による合体加熱の最大化、同内部コイル周辺のロスの最小化を今後推進していく予定である。
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