高信頼ナノ温度測定のための多重化量子センシング温度計の実現

• 研究課題/領域番号: 20KK0317
• 研究種目: 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
• 配分区分: 基金
• 審査区分: 中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
• 研究機関: 岡山大学 (2021-2023); 大阪市立大学 (2020)
• 研究代表者: 藤原 正澄 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 研究教授 (30540190)
• 研究期間 (年度): 2021 – 2024
• 研究課題ステータス: 交付 (2023年度)
• 配分額: 14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
• キーワード: 蛍光ナノダイヤモンド / 温度計測 / プラズモン / 温度測定 / 量子計測

研究開始時の研究の概要

本国際共同研究では、蛍光ナノダイヤモンドを用いたナノ温度測定を異なる測定原理にもとづく複数の測定モードで同時に行うマルチモーダル温度量子センシング技術を開発する。これにより、ナノ温度計測において障壁となる測定アーティファクトを削減し、高い信頼性を有する生体内温度計測として基課題に技術移植し、生体内一細胞温度のより精密な定量を実現する。外国研究者としては、蛍光寿命量子センシングハイブリッド技術を有するBenson教授（独国）がホスト研究者として参画する。また、微細加工や補償光学実装に関して、Schroeder博士（独国）・Patton博士（英国）が協力者として参画する。

研究実績の概要

本国際共同研究では、蛍光ナノダイヤモンドを用いたナノ温度測定を異なる測定原理にもとづく複数の測定モードで同時に行うマルチモーダル温度量子センシング技術を開発する。これにより、ナノ温度計測において障壁となる測定アーティファクトを削減し、高い信頼性を有する生体内温度計測として基課題に技術移植し、生体内一細胞温度のより精密な定量を実現する。外国研究者としては、蛍光寿命量子センシングハイブリッド技術を有するBenson教授（独国）がホスト研究者として参画する。また、微細加工や補償光学実装に関して、Schroeder博士（独国）・Patton博士（英国）が協力者として参画する。
2023年度は本格的な長期渡航による共同研究を実施した。ナノダイヤモンドの共焦点顕微鏡系の再構築、および、ODMR測定系の再構築を行った。また、蛍光寿命測定に必須のパルスレーザー励起による測定も可能とした。これをもとに、生体試料内の蛍光ナノダイヤモンド寿命測定を行った。温度測定については、Benson教授研究室のメンバーと共に、より生体環境に近い状況で行うことを今後予定している。また、金や銀のナノ粒子構造がナノヒーターとして働くことから、プラズモン励起による極微少熱源によるナノダイヤモンド温度計校正法という着想を、Benson教授との議論で得たため、この実験にも取り組んだ。AFMを用いてこれらナノ粒子を位置操作しつつ、ナノ熱加熱実験系の構築を行った。現在、論文化のメドが立ちつつあるが、より詳細な補完実験、追実験を加える必要があり、遂行中である。また、今回の渡航では、関連研究分野の研究者を、ドイツ・英国・フランスに積極的に訪問し、研究議論・意見交換を行った。この中から、本研究をより発展させることが可能なアイデアも生まれ、これについても今後取り組む予定である。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度に通算半年以上の渡航を行うことができ、研究を進展させることができたため。

今後の研究の推進方策

2023年度の渡航によって行った研究により、7割方の実験が完了した。一方、残り3割については、実験は主にBenson教授研究室の大学院生とKews博士が継続している。今年度は、この継続実験の結果に関する議論や追実験を行うための渡航を予定している。また、新たなドイツの研究者（Kaiserslautern大・Widera教授）と研究議論・意見交換を積極的に行った結果、スピン寿命測定をもとにした温度測定、高精度化技術の可能性が生まれたため、これに関する研究も今年度遂行する。

研究成果

• [雑誌論文] Diamond quantum sensors in microfluidics technology (2023)
  • 著者名/発表者名: Masazumi Fujiwara
  • 雑誌名: Biomicrofluidics 巻: 17 号: 5 ページ: 54107-54107
  • DOI: 10.1063/5.0172795
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Glass-patternable notch-shaped microwave architecture for on-chip spin detection in biological samples (2022)
  • 著者名/発表者名: Oshimi Keisuke、Nishimura Yushi、Matsubara Tsutomu、Tanaka Masuaki、Shikoh Eiji、Zhao Li、Zou Yajuan、Komatsu Naoki、Ikado Yuta、Takezawa Yuka、Kage-Nakadai Eriko、Izutsu Yumi、Yoshizato Katsutoshi、Morita Saho、Tokunaga Masato、Yukawa Hiroshi、Baba Yoshinobu、Teki Yoshio、Fujiwara Masazumi
  • 雑誌名: Lab on a Chip 巻: ー 号: 13 ページ: 2519-2530
  • DOI: 10.1039/d2lc00112h
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] Mobile quantum sensing setup based on Nitrogen-Vacancy centers in diamond (2024)
  • 著者名/発表者名: Wanrong Li, Oliver Gerull, Mike Johannes, Florian Boehm, Masazumi Fujiwara, and Oliver Benson
  • 学会等名: 2024, Spring Meeting of DFG
  • 国際学会
• [学会発表] On-chip quantum sensing for cellular analysis with ultrabright 12C-enriched fluorescent nanodiamonds (2024)
  • 著者名/発表者名: Keisuke Oshimi, Minori Teramoto, Hirokazu Tsuji, Yoshiki Nishibayashi, and Masazumi Fujiwara
  • 学会等名: Photonics West 2024
  • 国際学会
• [学会発表] 蛍光ナノダイヤモンドを用いたプラズマジェット照射下における表面温度計則 (2024)
  • 著者名/発表者名: 押味佳裕, 藤原正澄
  • 学会等名: 第71回応用物理学会春季学術講演会
• [学会発表] 不純物制御蛍光ナノダイヤモンドの評価および生体応用 (2024)
  • 著者名/発表者名: 押味佳裕, 中島大夢, Mandi? Sara, 小林陽奈, 寺本三記, 辻拡和, 西林良樹, 鹿野豊, 安東秀, 藤原正澄
  • 学会等名: 第71回応用物理学会春季学術講演会
• [学会発表] 12C-enriched fluorescent nanodiamonds prepared from CVD-grown diamond (2024)
  • 著者名/発表者名: Mina Tavakkoli, Keisuke Oshimi, Takaki Arakawa, Tokuyuki Teraji, Masazumi Fujiwara
  • 学会等名: 第71回応用物理学会春季学術講演会
• [学会発表] 量子センサ型バイオ分析デバイスの開発 (2023)
  • 著者名/発表者名: 押味佳裕，中島大夢，藤原正澄
  • 学会等名: 量子生命科学会第5回大会
  • 招待講演
• [学会発表] Evaluating ZIF-8 metal organic framework toxicity using Caenorhabditis elegans model (2023)
  • 著者名/発表者名: Muhammad Wahyu Nugraha
  • 学会等名: 複雑生命系秩序懇談会
• [学会発表] ナノダイヤモンド温度計測を目指した3次元マイクロ波共振器の開発 (2023)
  • 著者名/発表者名: 中島大夢
  • 学会等名: 複雑生命系秩序懇談会
• [学会発表] ナノダイヤモンド内包リポソームの作製と評価 (2023)
  • 著者名/発表者名: 荒川貴紀
  • 学会等名: 複雑生命系秩序懇談会
• [学会発表] Multimodal single cell nanothermalmetabolomic analysis (2023)
  • 著者名/発表者名: Mandic Sara
  • 学会等名: 複雑生命系秩序懇談会
• [学会発表] Glass-patternable notch-shaped microwave architecture for on-chip spin detection in biological samples (2023)
  • 著者名/発表者名: Keisuke Oshimi, Yushi Nishimura, Tsutomu Matsubara, Masuaki Tanaka, Eiji Shikoh, Li Zhao, Yajuan Zou, Naoki Komatsu, Yuta Ikado, Yuka Takezawa, Eriko Kage-Nakadai, Yumi Izutsu, Katsutoshi Yoshizato, Saho Morita, Masato Tokunaga, Hiroshi Yukawa, Yoshinobu Baba, Yoshio Teki, and Masazumi Fujiwara
  • 学会等名: GRS quantum sensing
  • 国際学会
• [学会発表] Glass-patternable notch-shaped microwave architecture for on-chip spin detection in biological samples (2023)
  • 著者名/発表者名: Keisuke Oshimi, Yushi Nishimura, Tsutomu Matsubara, Masuaki Tanaka, Eiji Shikoh, Li Zhao, Yajuan Zou, Naoki Komatsu, Yuta Ikado, Yuka Takezawa, Eriko Kage-Nakadai, Yumi Izutsu, Katsutoshi Yoshizato, Saho Morita, Masato Tokunaga, Hiroshi Yukawa, Yoshinobu Baba, Yoshio Teki, and Masazumi Fujiwara
  • 学会等名: GRC quantum sensing
  • 国際学会
• [学会発表] ナノダイヤモンド温度計測への応用を目指した3次元マイクロ波共振器の開発 (2023)
  • 著者名/発表者名: 中島大夢，押味佳裕，藤原正澄
  • 学会等名: 日本物理学会第78回年次大会
• [学会発表] ナノダイヤモンド温度計測への応用を目指した3次元マイクロ波共振器の開発 (2023)
  • 著者名/発表者名: 中島大夢，押味佳裕，藤原正澄
  • 学会等名: 応用物理学会秋季学術講演会
• [学会発表] Preparation and imaging of longitudinally sectioned C. elegans (2023)
  • 著者名/発表者名: Sara Mandic, Bryn Flinders, Michiel Vandenbosch, Ron M.A. Heeren, Masazumi Fujiwara
  • 学会等名: 1st IMSIS Conference
  • 国際学会
• [学会発表] ナノダイヤモンドを用いたODMR計測の開発と応用 (2023)
  • 著者名/発表者名: 藤原正澄
  • 学会等名: 第62回電子スピンサイエンス学会年会
  • 招待講演
• [学会発表] On-chip detection of optically detected magnetic resonance of fluorescent nanodiamonds for biological applications (2023)
  • 著者名/発表者名: Masazumi Fujiwara, Keisuke Oshimi
  • 学会等名: 33rd International Conference on Diamond and Carbon Materials
  • 国際学会
• [備考] 岡山大学ナノ化学研究室ホームページ
  • URL: https://www.nanochem-okayama-u.net/
• [備考] フンボルト大学ナノ光学研究室ホームページ
  • URL: https://www.physik.hu-berlin.de/de/nano
• [備考] 研究室ホームページ
  • URL: https://www.nanochem-okayama-u.net/