研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
フェロトーシス(Ferroptosis)は脂質酸化依存性の制御性細胞死の様式であり、グルタチオンの枯渇や過剰な酸化ストレスなどによって細胞内に酸化脂質が過剰に蓄積することで生じる細胞死である。急性組織障害、神経変性疾患、抗がん剤感受性等の機序への関与が知られておりフェロトーシスの病態関与の解明および薬剤的制御はこれら病態の新規治療法につながる。本研究では個別の脂質酸化種が細胞に与えるin vitro検討とフェロトーシス病態モデルであるGPX4誘導KOマウスによる急性腎不全組織のin vivo検討の統合的脂質解析からフェロトーシス発動に直接的に関与する脂質酸化種の同定を行う。
鉄介在性脂質酸化依存性細胞死であるフェロトーシスの生体内における制御機構および制御法の開発、各種病態への寄与について研究を行った。フェロトーシスの内在性制御代謝物の探索を行い、ビタミンKが強力にフェロトーシスを抑制することを培養細胞を用いたスクリーニング系から見出した。ビタミンKのなかでもビタミンK2の一種であるメナキノン4がもっとも低濃度からフェロトーシスを抑制する効果を認めた。さらに、in vivoにおいてもフェロトーシスモデルである、肝細胞特異的Gpx4ノックアウトマウスまたは腎臓および肝臓の虚血再灌流モデルに対してメナキノン4の投与がフェロトーシスを抑制し、臓器障害を軽減させることを認めた。機序としては、通常の存在様式である酸化型のビタミンKには脂質ラジカルに対する抗酸化能は認めないが、還元型ビタミンKが脂質ラジカルスカベンジャーとして作用することを明らかにした。さらに、これまでCoenzyme Q10の還元酵素として知られていたFSP1がフェロトーシスの抑制作用に必要なビタミンKの還元酵素であることを同定した。さらに、FSP1によるビタミンKの還元は、ビタミンK本来の作用である血液凝固作用に必要な従来型のビタミンKサイクルにおけるこれまで未同定であったワルファリン非依存性のビタミンK還元酵素であることも同定した。本成果は、1)ビタミンKのフェロトーシス抑制作用を明らかにしたとともに2)ワルファリン中毒時にビタミンKが解毒薬となる作用機序を明らかにしたものである(Mishima et al. Nature 2022)。
2: おおむね順調に進展している
培養細胞を用いたスクリーニング系からビタミンKが強力にフェロトーシスを抑制することを見出した。ビタミンKのなかでもビタミンK2の一種であるメナキノン4がもっとも低濃度からフェロトーシスを抑制する効果を認めた。さらに、in vivoにおいてもビタミンKのフェロトーシス抑制効果を明らかにした。またその機序としては、FSP1を介したビタミンKの還元が必要であることも明らかにした。さらに、FSP1によるビタミンKの還元は、ビタミンK本来の作用である血液凝固作用に必要な従来型のビタミンKサイクルにおけるこれまで未同定であったワルファリン非依存性のビタミンK還元酵素であることも同定した。以上から、研究は概ね順調に進展している。
ビタミンKのフェロトーシス抑制作用の生理的意義を多種の側面から検討を行う。またビタミンK以外にも他のフェロトーシス抑制能を有する生体内代謝物の探索をさらに行う。ビタミンKがフェロトーシスを抑制するためにはどのような脂質ラジカルに対するスカベンジャー作用が重要であるかの検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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