研究概要 |
米国コーンエタノール需要は再生燃料政策で膨張し,トウモロコシ価格を高騰させた。それがコーンベルト中核と周縁部の両方においてトウモロコシ生産の急拡大と,穀作農業の大規模化,メガファーム化を促進した。しかし他面で地価高騰・資本装備巨額化による農場参入と継承困難問題を生み,軽減耕起・不耕起栽培も除草剤耐性・線虫耐性(連作障害軽減)遺伝子組換え品種のいっそうの拡張と結合しており,総じて「工業化農業」の矛盾は形式的に克服されつつ,実質的には深化している側面が検出された。エタノール企業の産地立地展開は,域内に有利なトウモロコシ市場をもたらし,さらに生産者・住民出資型企業の場合,好況期には高い配当をもたらした。しかしトウモロコシ価格高騰後は収益性が低下して配当は停止し,またそもそもコーンエタノールがエネルギー収支,二酸化炭素削減面で有効かという問題が提起されており,その長期持続性には疑問が残る。
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