| 研究概要 |
周辺視野も含む視野全体の動き情報は,自己身体全体の移動感覚をもたらす。本研究はこうした視覚的に与えられる自己運動情報が,人間の聴覚空間形成に及ぼす影響を解明することを目的とした。その結果,左右方向への視覚的自己運動情報によって,聴覚空間に系統的な歪みが生じることが明らかになった。ただし,歪み方は課題の種類や聴覚刺激が提示される空間によって異なった。音源を前方空間に提示した場合,ポインティング課題を用いると自己運動と反対方向にずれて知覚されるが,プローブ課題では正しく知覚された。一方,音源を後方空間に提示した場合には,プローブ課題において自己運動と一致した方向に音源位置がずれて知覚されることがわかった。これら課題よる違いは,音源が表現される心的座標系に依存して自己運動情報の影響が異なることを示している。前方・後方空間間の差異は,視覚系との相互作用などが考えられ,この点については今後の研究で明らかにしていく必要がある。
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