研究課題
若手研究(B)
自閉症は、対人的相互作用やコミュニケーションの障害、興味・活動の限定された反復的常動的な行動様式などによって特徴付けられる広範性発達障害である。自閉症の病態メカニズムはいまだ不明であり、根本的な治療法は確立されていない。このような背景のもと、自閉症の死後脳においてReelin mRNAの減少とその受容体の一つであるVLDL受容体(VLDLR : Very Low Density Lipoprotein Receptor)mRNAの増加が報告された。そこで本研究課題では、遺伝子改変技術によってVLDLR過剰発現ラット(Tgラット)を作製し、自閉症者に類似の行動学的変化を示すかどうかを解析することにより、本ラットが自閉症の病態モデルと成り得るかを検討することを目的とする。行動実験によりTgラットに自発運動量の有意な増加、および作業記憶の低下傾向が認められた。一方、社会性や不安に異常は認められなかった。多動や作業記憶の障害は自閉症を含め広範性発達障害に広く認められる症状であり、本ラットの自発運動量の増加および作業記憶の低下傾向は非常に興味深い。また、Tgラットの脳に組織学的な異常は認められなかった。発達障害や精神疾患者の脳に劇的な組織学的異常が認められていないことから、本ラットが劇的な組織学的異常を持たず、上記の行動学的異常を示したことは精神医学的に意義深く、発達障害や精神疾患のモデルとして有用であると考えられる。
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