研究概要 |
本研究プロジェクトは,高齢者の感情処理にみられるポジティビティ効果の諸側面を測定するための適切な実験パラダイムの開発に貢献した。主に3つの研究が遂行された。1つ目の研究では,顔表情からの感情認識の年齢差が認知のエイジングとどのように関連しているかが検討された。その結果,喜び,驚き,恐怖,悲しみの表情認識の加齢に伴う低下は認知のエイジングによって完全に説明できるが,怒りの表情認識の低下は説明できないことがわかった。このことから,怒り認識がポジティビティ効果の良い指標として用いることができると示唆される。2つ目と3つ目の研究では,実生活における社会的交換場面を模した新しい意思決定課題が開発された。これらの課題は,若齢者が「信頼できそうに見える搾取者」に非常に敏感であることを明らかにし,高齢者の詐取に対する脆弱性の測定への応用可能性が示唆された。以上のように,本スタートアッププロジェクトは,加齢が感情処理に与える影響をさらに研究する上での基礎の確立に成功したといえるだろう。
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