研究課題/領域番号 |
21H01408
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22010:土木材料、施工および建設マネジメント関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 光 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60242616)
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研究分担者 |
三浦 泰人 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10718688)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | フック / 重ね継手 / 横方向鉄筋 / 応力伝達 / 剛体バネモデル / 付着 / 定着 / 曲げ変形挙動 / 光ファイバー / 繊維補強コンクリート / 内部ひび割れ進展 / 画像相関法 |
研究開始時の研究の概要 |
コンクリート構造物では鉄筋の付着・定着が確保されていることを前提とし、その前提を構造細目として仕様規定として定めている。しかし、その幾つかは力学的根拠を説明することが困難となっており、合理的な配筋規定への変更をする場合に障害となることが生じている。 本研究では、①体系的な付着・定着引抜き試験の実施と工夫した計測技術による鉄筋近傍からの内部ひび割れなどの損傷進展の把握、②最新の数値解析技術による内部損傷進展や応力伝達挙動の把握、を行い損傷進展挙動や応力伝達メカニズムを明確にし、付着・定着に対する「暗黙知」を「形式知」に変え、合理的な配筋規定確立のための知見を得る。
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研究実績の概要 |
当初予定通り、①載荷試験側面、②計測側面、③数値解析側面からの検討を行った。 (1)①載荷試験側面および②計測側面の検討では、2021年度に作成した載荷装置を用い、フックの曲げ内半径、かぶり、余長を変えた鉄筋の引抜試験を行った。曲げ内半径については、昨年度の検討でフック部の変形が引抜き挙動に大きく影響していることが明らかになったため、ひずみの測定点を増やした昨年度と同じ諸元での再実験を行った。さらに、新たな計測側面での検討として0.6mm間隔でひずみが測定できる光ファイバーによる連続的な鉄筋のひずみ分布計測も行った。これらのひずみの計測結果から、引抜き時のフック部はかなり複雑な曲げ変形挙動をしていることを明らかにした。また、ひずみが小さい範囲で顕著なひずみの増加を示す箇所があり、フックの曲げ加工時に導入される塑性ひずみも付着・定着挙動に影響を与えることを明らかにした。 (2)③数値解析側面では、実験を行った供試体に対して3次元剛体バネモデル(3D-RBSM)を用いた数値解析を行い、実験での着目点となった曲げ変形挙動とフック周辺の応力分布の詳細な検討を行った。その結果、曲げ内半径や余長の違いによるフック部の曲げ変形の相違がフック内部の応力分布に大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。また、曲げ加工部の鉄筋の降伏の影響も解析的に検討し、実験結果から推測した塑性加工時での初期ひずみ・初期応力が、付着・定着挙動に影響を及ぼしていることを明らかにした。さらに、フック部の有無も含めた重ね継手に対する解析も行い、重ね継手長や空き間隔が重ね継手部の力の伝達機構に及ぼす影響を明らかにした。加えて、3D-RBSMを繊維補強コンクリートの解析が可能なモデルに拡張し、繊維補強コンクリートの付着・定着挙動を評価出来る手法の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度に予定していた、①載荷試験側面、②計測側面、③数値解析側面、の3つの観点での検討は、いずれも着実に実施した。 (1)①の載荷試験側面および②の計測側面については、予定通りのパラメータの実験を実施した。実験の際には、フック部の引抜き時のひずみを0.6mm間隔で測定可能な光ファーバーで連続的に計測するという世界で初の試みも行った。また実験結果から、フック部の変形挙動に関する貴重なデータの取得、曲げ加工時の初期ひずみによるフック部の早期の部分的な降伏が付着・定着挙動に影響を与えるという知見などの成果を出した。 (2)③の数値解析側面では、2021年度に適用性を確認した解析手法で、各種構造諸元や鋼材の降伏応力などの材料特性を変更した解析を行い、フック部のひずみや変形挙動、フック周辺の応力分布に与える影響を検討した。実験結果から得られた知見と組合わせ、フック部の付着や定着メカニズムを明らかにした。また、重ね継手にも解析手法を適用し、重ね継手部の力の伝達挙動やひび割れ進展挙動を解析結果から可視化し、継手長や継手の空き間隔が異なる場合の力の伝達機構に及ぼす影響を明らかにした。さらに、3D-RBSMを鋼繊維や有機繊維を用いた繊維補強コンクリートの解析が可能なモデルに拡張し、繊維補強コンクリート内の異形鉄筋の付着挙動を解析することを可能にし、繊維補強コンクリートにより鉄筋からのひずみの進展挙動を拘束することで、付着挙動が改善することを明らかにした。 3つの観点のいずれも予定通りの内容を概ね実施し、さらに数値解析側面では予定にはなかった繊維補強コンクリートの付着評価という応用的な問題も実施することが出来た。また、IFの高いジャーナルにも論文が掲載されるなど、得られた成果の公表もできたことから、総合的に「当初の計画以上に進展している」と自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの検討で確立した実験・計測方法を用いて新たなパラメータによる実験を行うとともに、適用性を確認した解析方法を用いて実験パラメータ以外の多様なパラメータに対する損傷進展挙動や応力伝達メカニズムを明確にする。研究計画に沿って、①載荷試験側面、②計測側面、③数値解析側面、の3つの観点で以下の検討を行う。 ①の横方向鉄筋・繊維補強量がフックの付着・定着挙動に及ぼす影響評価の載荷試験側面に関しては、鉄筋の定着に最も重要な役割を果たすフックを対象に、フック周辺の拘束効果の影響を明らかにするため、横方向鉄筋量を主なパラメータとした場合と繊維補強コンクリートを用いた場合の引抜試験を行い付着・定着挙動を検討する。 ②の損傷進展挙動把握のための供試体内面のひび割れの計測方法の確立(計測側面)に関しては、フックの応力伝達は周辺のコンクリートの影響と密接に関係することが昨年度までの検討で分かったため,ひずみゲージを貼付したアクリルバーをフック部周辺に配置し、コンクリートの損傷過程を明らかにする。また、フック部を一部露出した供試体を作成し、画像相関法でフックの変形やフック部周辺の損傷把握の可能性を検討する。 ③の数値解析技術による各種要因に対する内部損傷進展や応力伝達挙動の把握(数値解析側面)に関しては、昨年度までの検討でフック部の付着や定着性能の再現が可能であることが示された解析手法を用いて、多様な要因に対する数値解析を行う。さらに、フックだけでなく重ね継手に対する解析をさらに行うとともに、繊維補強コンクリートに対する検討も行う。これらの解析結果から得られた鉄筋の状態と、コンクリートの内部損傷や応力分布を検討し、損傷進展とフックや重ね継手の定着メカニズムの明確化、繊維補強コンクリートの付着・定着性能の改善効果の評価を行う。
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