研究課題/領域番号 |
21H01648
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白岩 隆行 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10711153)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | アコースティック・エミッション / 疲労 / ベイズ推定 / 非破壊評価 / 構造物ヘルスモニタリング / AE(アコースティック・エミッション) / き裂進展 / 弾性波 / 非破壊 / 疲労き裂発生 / チタン合金 / マグネシウム合金 |
研究開始時の研究の概要 |
以下の2つの学術的「問い」を設定する。 1. 金属材料の疲労試験中に弾性波を発生させる物理現象(AE源)は何か? 2. 疲労試験中のAE信号を解析することで、疲労破壊についてどのような情報が得られるか? これらの問いに対して、AEと同時に得られた観測データについて、ベイズ推論にもとづくデータ解析を行うことで、解析者の主観によらないAE記述子の抽出を行う。また疲労は複数の変形・破壊機構が重畳して生じる複雑な現象であるため、単一の材料系で評価手法を確立しても、構造材料一般に使用できる手法とはなり得ない。そこで本研究では、実用上重要な金属材料の中でいくつか特徴的なものを選び、疲労試験する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、前年度までに検討してきたAE計測系を用いて、Ti合金の疲労試験やDwell疲労試験中のAE信号の取得を進めた。また前年度までに検討してきたAE記述子を用いて、き裂発生・進展挙動の解析を進めた。具体的には、レプリカ交換マルコフ連鎖モンテカルロ(RE-MCMC)法において確率的複雑さが最小であったモデルに、選択されたAE記述子の測定データを代入することで、き裂発生数、き裂発生寿命、き裂進展速度、き裂進展ステージの変化点を得た。またAE信号と同時に荷重のデータを取得することで、AE発生源についての考察を行った。特にAE発生時の荷重によって、き裂開閉口を考慮したモデルを組み込むことを検討した。またデータ同化手法を用いて、AE信号とき裂進展速度を関連付けるモデルをリアルタイムに更新しながら、高精度に将来の疲労き裂進展を予測する手法を検討した。検討した結果は、国内外の学会やワークショップで発表した。またAE発生とともに起きた現象を理解するために、ナノ~マイクロメートルスケールのひずみ計測を行った。Ti合金に金薄膜を形成したあとにリモデリングと呼ばれる手法でナノスケールのパターンを表面に形成した。これを疲労試験前、試験中、試験後にSEMで高解像度(解像度:数nm)で観察し、Ncorrというオープンソースソフトウェアを用いてデジタル画像相関解析を行った。結果として、Ti-64合金多結晶体の各結晶粒で発生するすべり線や疲労き裂を多数自動計測することが可能となった。この計測・解析手法は、疲労の問題のみならず、金属材料の様々な変形破壊の解析に有効であると考えられる。この提案手法は論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は昨年度までに開発した実験系を使用して、Ti合金を中心に実験を進めた。疲労き裂進展試験については、微視組織の異なる複数のTi-64合金を用いた。ラメラ状組織と等軸晶組織、バイモーダル組織のそれぞれで異なるき裂進展挙動とAE信号を得ることができた。AE信号とき裂進展モデルのデータ同化により、従来の解析手法では困難であった、き裂開閉口挙動を試験中にリアルタイムに捉えることができる可能性が見えてきた。AE信号の解析については、従来の計画通り、順調に進展していると判断できる。またAE信号の解析に加えて、試験片表面の変形挙動を高解像度で計測できる高解像度デジタル画像相関法(HR-DIC)について取り組みを開始した。これは計画外の進展であり、応用範囲も広いとカンガラレ、今後の展開を期待している。期間中に得られた成果については、学会発表や論文発表という形で広く発表することができた。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
AE法は間接的な計測手法なので、直接的な観察手法で解析結果を検証することが必須であると考えている。そのために、観察可能な試験片表面の情報を用いて、AEデータ同化解析の結果を検証する。具体的には、高解像度デジタル画像相関法(HR-DIC)を用いる。この手法で用いるAu薄膜のナノスケールパターンは、膜厚が小さいため、結晶方位分布を解析するためのEBSD解析に影響を与えないという特徴があり、ひずみ分布解析と結晶方位解析を同時に行えることが強みである。これまではTi合金中心に解析進めてきたが、今後は鉄鋼材料やニッケル基合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金にも各種手法を適用する。特にマグネシウム合金は双晶変形を伴うため、引張/圧縮方向により異方性がある。AE法により双晶変形のタイミングを捉えることで、結晶塑性有限要素法や離散転位動力学などの数値シミュレーションで用いられる未知のパラメータを同定する仕組みを作っていきたい。
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