研究課題/領域番号 |
21H01833
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
反保 衆志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (20392631)
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研究分担者 |
永井 武彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (70415719)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2021年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 多元系化合物 / エピタキシャル成長 / 格子欠陥 / 半導体 / 太陽電池 / CZTS |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、光デバイス用多元系化合物半導体の欠陥の影響と機能の定量評価と制御の学理構築を目的とする。多元系半導体では存在自体が即、欠陥となる大きな不定比性、空孔・アンチサイト欠陥についても理解が進まないまま時として積極的に利用され一部実用化されている。本研究では希少金属を利用しない4元系半導体Cu2ZnSnSe4(CZTS)に着目し、エピタシャル薄膜を利用し、多彩な評価方法および計算額手法を利用して、欠陥を精密かつ包括的に定量評価する。
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研究実績の概要 |
太陽電池の新しい評価手法として、蛍光測定による評価の検討を行った。ベースとなる手法は、Uwe Rauらが発表した、外部輻射効率(ERE)と開放電圧損失(Voc deficit)の関係である。開放電圧損失はVoc deficitは、Voc deficit =ΔVoc,rad + ΔVoc,radとあらわされる(ΔVoc,rad :電圧の発光損失、ΔVoc,nrad:電圧の非発光損失)。この発光損失分は物性値やバンドギャップで決まり、およそ0.25Vでありほぼ一定である。一方、非発光損失部分は、非発光性の欠陥量で決まる値であり、いわゆる結晶性の高い材料により抑制することができ、以下の関係が成り立つ。Voc,nrad =-(kT/Q)Log(ERE)。さらに、この関係は広く発表されている太陽電池で成立することが山口教授らにより報告された。このEREについては、内部発光効率と近似でき、発光寿命によりERE ~ τ(r)/ {τ(r)+ τ(nr)}~ τ(nr)/ τ(r)となる(τ(r):発光性キャリア寿命、τ(nr) :非発光性キャリア寿命)。τ(r)は材料による定数であるので、EREはτ(nr)により評価することができる。ただし、τ(nr)は蛍光寿命により通常評価される特殊な装置(時間分解PL)を要する。そこで、さらに一般的な評価手法である通常のPLによる評価を試みた。理論的には、均一に照射された場合において、発光の時間軸での積分および空間軸での積分をすることにより、発光強度は発光寿命に比例することを示した。この比例関係については、弱励起および強励起での発光のいずれも適用できることをさらに示した。また、この関係を利用して、CZTS太陽電池の開放電圧と発光特性の関係について調査を行い、Voc,nradとlog(PL intensity)に比例関係があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はコロナ禍のため、実験時間が制限されたため研究の進捗が著しく滞った。そのため、2022年度に予定した内容についても一部後ろ倒しで実施したため、全体として進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
PL強度とPL発光寿命に比例関係があることを利用論的に明らかにし、その関係を利用して実際にCZTS太陽電池において開放電圧と発光寿命の関係について調査を行った。山口教授らに報告されている多くの太陽電池においては、外部輻射効率が一桁増大すると開放電圧が60 mV増大することが期待される。つまり、発光強度が1桁増大により開放電圧が60 mV増大が期待される。実験的にはCZTS太陽電池においては、Voc,nradとlog(PL intensity)に比例関係があったがその比例係数が、240 mV/orderと大きなかい離があることが分かった。今後はそのかい離について、理論的及び実験的にもより多くの太陽電池に適用し調査する必要がある。
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