研究実績の概要 |
太陽電池の新しい評価手法として、蛍光測定による評価の検討を行った。ベースとなる手法は、Uwe Rauらが発表した、外部輻射効率(ERE)と開放電圧損失(Voc deficit)の関係である。開放電圧損失はVoc deficitは、Voc deficit =ΔVoc,rad + ΔVoc,radとあらわされる(ΔVoc,rad :電圧の発光損失、ΔVoc,nrad:電圧の非発光損失)。この発光損失分は物性値やバンドギャップで決まり、およそ0.25Vでありほぼ一定である。一方、非発光損失部分は、非発光性の欠陥量で決まる値であり、いわゆる結晶性の高い材料により抑制することができ、以下の関係が成り立つ。Voc,nrad =-(kT/Q)Log(ERE)。さらに、この関係は広く発表されている太陽電池で成立することが山口教授らにより報告された。このEREについては、内部発光効率と近似でき、発光寿命によりERE ~ τ(r)/ {τ(r)+ τ(nr)}~ τ(nr)/ τ(r)となる(τ(r):発光性キャリア寿命、τ(nr) :非発光性キャリア寿命)。τ(r)は材料による定数であるので、EREはτ(nr)により評価することができる。ただし、τ(nr)は蛍光寿命により通常評価される特殊な装置(時間分解PL)を要する。そこで、さらに一般的な評価手法である通常のPLによる評価を試みた。理論的には、均一に照射された場合において、発光の時間軸での積分および空間軸での積分をすることにより、発光強度は発光寿命に比例することを示した。この比例関係については、弱励起および強励起での発光のいずれも適用できることをさらに示した。また、この関係を利用して、CZTS太陽電池の開放電圧と発光特性の関係について調査を行い、Voc,nradとlog(PL intensity)に比例関係があることを明らかにした。
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