研究課題/領域番号 |
21H01950
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀毛 悟史 京都大学, 理学研究科, 教授 (70552652)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 配位高分子 / 相転移 / 融液 / ガラス / 分子構造 / 結晶融解 / 機能性液体 |
研究開始時の研究の概要 |
金属イオンと架橋性配位子から組み上がる配位高分子(Coordination Polymer, CP)は磁性、伝導性、光物性など多彩な特性が知られてきた。膨大な数のCP研究のほとんどは結晶相を対象としてきた。近年、一部のCP結晶を加熱して得られる「液体相」およびそれらを冷却して得られる「ガラス相」が見いだされた。一方、CPの融液の構造や機能は未だ研究がなされていない。本研究では多彩な結晶構造や特性を持つCPが融液となったとき、どのような構造や物性を示すのか、それらを先端解析と系統的合成によって取り扱う。この研究を通してCP融液を新たな機能性液体として提案する。
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研究実績の概要 |
当該年度はおもにアゾレート、ニトリル、アミンなどからなる架橋性配位子と金属イオンから組み上がる配位高分子の結晶融解現象について合成、解析の両面から検討を行った。一次元、二次元、三次元それぞれの結晶構造を有する配位高分子を調整し、熱分析(TGA、DSC、レオメーター)および温度可変粉末X線回折から結晶融解現象を追跡した。一次元鎖状の配位高分子結晶構造では、おもにニトリルからなる構造において200~300度に融解現象を、またその冷却によって速やかに結晶化することを確認した。その温度過程で連続的に粘弾性測定を行うことにより、融液状態においても配位結合の大部分は保持されたネットワーク特性を帯びていることを明らかとした。これは結晶構造が低次元構造の集合体であることがその一因と考えている。また冷却過程における結晶化の速度解析をDSCを用いて行ったところ、Johnson-Mehl-Avrami-Kolmogorov (JMAK) の結晶化の式に従う挙動を示した。これは一次元鎖状配位高分子が一般的な有機高分子と同等の結晶化機構を持つことを意味し、上述の配位結合構造の融液における保持がサポートされた。一方新規物質探索においては、Cu+とイミダゾレートからなる一次元鎖状結晶構造を系統的に合成していった。イミダゾレートの二位の置換基をかえて構造を合成することで融点や粘度を系統的に変化できることを明らかとした。またそれら複数の結晶試料を共融解させ、冷却させることにより、異なる配位子が均一に導入された再結晶体やガラスが得られることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属イオンと架橋性配位子からなる様々な結晶融解性配位高分子を純度よく調整できる技術を獲得し、定量的にそれらの融液の構造解明と機能発現に取り組む素地を得られた。また幅広い温度領域で様々な熱分析(TGA、DSC、粘弾性測定、TMAなど)を実施する環境を構築し、ニトリルやアゾレートからなる配位高分子の融解と再結晶現象を追跡、理解してゆくことができた。本研究の主たる目的の実現のための試料合成および解析についてしっかりとした指針を得ることができた。また具体的な検討の中で、融液の結晶化の機構がポリエチレンなどと同様の挙動であることがわかり、新たな相変化の解釈の知見を獲得できたことも、おおむね順調に進展していると判断した一つの今後につながる成果である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で系統的に合成できることがわかったニトリル、アゾレート系配位子からなる結晶融解性配位高分子を用い、一連の熱分析やX線構造解析を通して理解を深めてゆく。結晶構造と金属イオン/配位子の組み合わせがもたらす融解現象や結晶化現象の相関を明らかとし、構造設計へとつなげてゆく。また一次元鎖状配位高分子の融液においては膜化やファイバー化といったエンジニアリングができることが分かっており、それらを通して得られる様々な形状に内在する配位構造を小角X線散乱や固体NMRなどから明らかとし、機能発現へとつなげてゆく。
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