研究課題/領域番号 |
21H01971
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
柴 弘太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, 主幹研究員 (20638126)
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研究分担者 |
田村 亮 国立研究開発法人物質・材料研究機構, マテリアル基盤研究センター, チームリーダー (20636998)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 鼻腔 / マイクロ流路 / 流体力学 / 構造力学 / 機械学習 / 粘性係数 / 分子量 / 流体―構造相互作用 / 気体 / 流体 / 有限要素解析 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトの五感の中で、人工の「嗅覚」の開発だけが依然道半ばである。その実現がもたらすであろう様々な応用は人類にとって有用であり、この開発は基礎科学から産業に至るまで広い視点で重要な課題である。この課題に対して、本研究では、鼻の内部構造(鼻腔)とそこでのガス流れの相関を詳細に検討することで、人工嗅覚の実現に資するセンサ開発の指針獲得を目指す。申請者がこれまで独自に開発したガス分子量および粘度測定手法によるガス流れのリアルタイム計測に加え、流体シミュレーションと機械学習を組み合わせたガス流れ・センサ応答の最適化プロセスを組み込むことで、目的達成に向けた研究を加速する。
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研究実績の概要 |
本研究では、我々の鼻の内部構造(鼻腔)とガス流れの相関を詳細に検討することで、人工嗅覚の実現に資する最適センサの開発指針を得る。この目的に向け、申請者独自のガス分子量測定法(大気環境、リアルタイム、非破壊)および同特長のガス粘性測定法(2019年採択の国際共同研究強化Bで創出済み)を用いる。これら手法はガス流れに伴う構造体の機械的変形を測定するため、任意のガスから異なる情報を得られる。加えて、その測定流量範囲(mL/min~L/min)、高速応答性(< 1 sec)から、呼吸レベルの流体計測に適している。鼻腔の各要素を模した流路内でこれら測定を行うことで、生物嗅覚に見られるニオイの高感度検出・高精度識別の理由を明らかにする。上記の相関には非線形性が想定されるため、有限要素解析と機械学習を組み合わせたガス流れ・センサ応答の自動最適化プロセスを組み込むことで、研究を加速する。 昨年度までに実施した様々な検討の結果、市販の鼻腔モデルでは嗅覚受容体が分布している鼻腔上部に閉塞が見られるなど、本研究での使用に適さないことが分かった。一方、コンピュータ断層撮影によりヒトの鼻腔を実測し、得られたデータをもとに鼻腔モデルを3Dプリントしたところ、上記の問題は生じなかった。そこで、本年度の検討にはこれを用いることとし、その内部の特徴的な箇所に複数のセンサを固定化することでセンサ応答を取得、その後に予定している種々の解析に供する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は、計画していた研究内容を実施するとともに、耳鼻咽喉科の専門家と共同研究契約を締結するなど、本研究の目的達成に向けた体制構築にも尽力した。本研究について上記専門家と定期的に意見交換する場を設け、研究の意義や妥当性、方向性に関して議論を深めている。その中で、人工嗅覚というセンサの開発のみならず、臨床や生物学的な視点からも本研究は重要であることを認識するに至った。その流れを受け、本提案は出来合いの鼻腔モデルにとどまらず、実際のヒトデータに基づきより実際的な検討を実施する方向へと軌道修正済みである。これは医療機関と連携構築したからこそスムーズに実現できたことであり、研究計画段階では想定していなかった内容へ発展している。以上の理由から、本研究はきわめて順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、3Dプリンタを利用して鼻腔モデルを作製し、その内部に複数のセンサを固定化することで、センサ応答と鼻腔構造の相関を詳細に検討する。昨年度実施した検討の結果、市販の鼻腔モデルでは嗅覚受容体が分布している鼻腔上部が塞がっているなど、本研究での利用に適さないことが分かった。コンピュータ断層撮影により得られたヒトの鼻腔データをもとに鼻腔モデルを3Dプリントしたところ、上記の問題は生じなかったため、本年度の検討にはこれを用いる予定である。また、健常成人および疾患のある成人の鼻腔モデルを作製し、応答計測に用いることも計画している。こうした一連の検討を通して、ニオイ知覚における重要因子を鼻腔構造という視点から明らかにし、人工嗅覚の実現に資する設計指針を獲得していきたいと考えている。
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