研究課題
基盤研究(B)
近年、栄養学に体内時計の概念を導入した“時間栄養学”は、既存の栄養学に再発展をもたらしている。ここでは、神経・感覚系疾患(主に難聴)をモデルとして、神経システムの脆弱性の日内変動を明らかとし、時間栄養学による予防アプローチの概念を構築する。神経細胞は再生力が弱く、生涯にわたって死なせないための予防が重要となる。日常的に摂取可能な食品から、長期的に神経細胞死を予防するための、新しいアプローチ法が構築されることが期待される。
本年度は、これまでにマウスモデルにおいて難聴予防効果を確認しているNアセチルシステインを利用し、その難聴予防効果の時刻依存性の有無について検討を行った。C57BL/6のメスマウスに、1日2回(活動初期と後期;以下、朝・夕と表現)、各4時間の食事時間枠を設け、そのどちらか、もしくは両方に、Nアセチルシステインを1%含有する飼料を給餌した。約半年間飼育し、加齢性難聴の進行を解析したところ、全体としては、Nアセチルシステインの給餌による効果は認められなかった。一方で、層別解析することにより、その効果が顕在化した。具体的には、C57BL/6マウスは、我々のこれまでの解析から、早期に加齢性難聴に陥る集団と、比較的ゆっくりと加齢性難聴が進行する集団に二極化することがわかっている。そこで、この2集団を分けて解析したところ、早期に難聴が進行する集団では、Nアセチルシステインの給餌による難聴予防効果が認められなかったのに対し、難聴が相対的に緩やかに進行する集団においては、Nアセチルシステインを朝・夕、もしくは、朝に給餌することで、給餌しない集団、もしくは、夕に給餌した集団よりも、加齢性難聴の進行が抑制されていた。以上の結果から、難聴進行が早い集団は、Nアセチルシステインによる難聴抑制が効かない、あるいは、効きづらいのに対し、相対的に難聴進行が遅い集団では、Nアセチルシステインを朝に摂取することで、効果的に難聴を抑制できることが示唆された。引き続き、その作用メカニズムについて解析を進めている。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 86 号: 8 ページ: 1085-1094
10.1093/bbb/zbac092