研究課題/領域番号 |
21H02174
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
平野 達也 名城大学, 農学部, 教授 (30319313)
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研究分担者 |
黒川 裕介 名城大学, 農学部, 助教 (60851798)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | イネ / デンプン分解 / 稈および葉鞘 / 染色体断片置換系統群 / 遺伝子マッピング / 葉鞘 / 非構造性炭水化物 / α-アミラーゼ / β-アミラーゼ / 茎部 / ソース機能 / β-アミラーゼ / 連鎖解析 / デンプン分解関連酵素遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
世界中で主食として利用されるイネの収量向上には、穂のサイズや粒形などのシンク容量を増大させることと並行して、コメの登熟を満たす同化産物の供給能力であるソース機能を増強させる必要がある。イネの登熟に関わるソースとしては出穂期までに茎部に蓄積されるデンプンが重要な役割を担っている。本研究では、茎部デンプンの出穂後の分解機構を明らかにするため、αおよびβ-アミラーゼアイソジーンそれぞれの発現抑制系統などを用いて、各遺伝子の機能の違いを解析する。また、茎部デンプンの分解が早いインド型品種の特性をもたらす因子を同定するため、インド型品種と日本型品種の間で作出された遺伝解析用の系統を用いた解析も進める。
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研究実績の概要 |
イネβ-アミラーゼ遺伝子、OsBAM2、OsBAM3およびOsBAM5の発現に関する特異性を、プロモーターとGUS遺伝子の発現コンストラクトを導入した形質転換体により解析した結果、OsBAM2とOsBAM3はラミナジョイントにおいて強く発現していることが新たに明らかになった。また、葉鞘における横断切片を用いたGUS遺伝子の発現の観察から、それぞれの遺伝子の発現が組織レベルで異なることが示された。また、OsBAM2とOsBAM3はブラシノステロイドの添加により発現が強く誘導されること、逆にOsBAM5はブラシノステロイドやジベレリンの添加によって発現が抑制されることが明らかになった。 超多収インド型品種のタカナリでは、出穂後の葉鞘においてα-アミラーゼ遺伝子の一つであるRAmy2Aの発現が急激に増加し、それが原因の一つとなってデンプン分解が誘導されることを研究代表者はすでに明らかにしている。さらに、RAmy2A発現抑制系統の葉身デンプン含量の変化と光合成速度を解析したところ、RAmy2Aの発現抑制は葉身のデンプン含量ならびに光合成速度に及ぼす影響は小さく、RAmy2A発現抑制系統での登熟歩合の低下は、葉鞘や稈でのデンプン分解の遅延によって主にもたらされていると考えられた。 日本型イネ品種コシヒカリの第6染色体の一部にインド型品種IR64の染色体が挿入されたSL2021は、出穂後の葉鞘におけるデンプン分解能が高い。そこで、その原因遺伝子の単離に向けて、SL2021に対してさらにコシヒカリを交配して育成したF2系統を用いてヨウ素染色法により葉鞘デンプン分解能の表現型を解析し、新たに構築した分子マーカーによる遺伝子型解析との関連を調査した。その結果、原因遺伝子の候補領域を第6染色体上のおよそ7.46Mbに短縮することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OsBAM2、OsBAM3およびOsBAM5の各プロモーターとGUS遺伝子の発現コンストラクトを導入した形質転換イネを用いた発現の組織特異性に関する解析は予定どおり進み、また葉切片を用いた糖や植物ホルモンに対する遺伝子発現応答の違いについても成果が得られた。一方、3つのβ-アミラーゼ遺伝子のうち異なる2つずつが発現抑制された系統による表現型解析を2022年度には行うことができなかったので、それについては2023年度に実施予定である。 一方、タカナリを原品種としたRAmy2A発現抑制系統において葉身デンプン含量と光合成速度を解析する実験については2021年度に実施することができなかったが、2022年度にその解析を実施し、十分な結果が得られた。一方、タカナリを原品種としたβ-アミラーゼ遺伝子の発現抑制系統の表現型解析については、その準備としてのT1種子の採種までは終わっている。そのT1系統を育成し、実際に発現抑制が生じている系統の選抜とT2種子の採種を進める予定であるが、この課題については予定よりも進捗が遅れている。 第6染色体上に存在すると予想されるインド型品種由来のデンプン分解能を高める原因遺伝子の単離を目指して、コシヒカリとIR64の間で作出されたコシヒカリベースの染色体断片置換系統であるSL2021を用いて解析を行っている。その課題については、SL2021とコシヒカリを交配して育成したF2系統を用いて原因遺伝子の候補領域を短縮することができたことから、順調に研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
OsBAM2とOsBAM5、ならびにOsBAM2とOsBAM3のダブルノックダウン系統および、OsBAM2とOsBAM3、OsBAM5のトリプルノックダウン系統を育成して、生育や出穂期以降の葉鞘や節間におけるデンプン含量の変化、収量構成要素を解析し、各β-アミラーゼ遺伝子の発現抑制が表現型に及ぼす影響を明らかにする。これらは2022年度に実施することができなかったが、解析に用いる系統のT2種子は獲得済みであるので、解析を行う準備は整っている。 タカナリにおけるβ-アミラーゼ遺伝子発現抑制系統の作出とその解析に関しては、解析系統の作出までは終わっている。しかし、2023年度にT1系統を育てて、さらにT2種子を採種し、それを用いて解析を行うには時間的に難しいことから、他の課題を優先して取り組み、この課題については優先度を下げたいと考えている。 SL2021とコシヒカリの交配自殖系統を用いたデンプン分解能を高める遺伝子単離に向けた連鎖解析では、昨年度の系統選抜により、原因遺伝子の候補領域においてIR64型ホモとなった組換え自殖系統が10系統以上得られている。そこで、今年度はそれらを圃場やポット栽培で育成し、表現型の反復をとりながら、より高精度の連鎖解析を行う予定である。
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